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未読書日記12 『量子力学の解釈問題―実験が示唆する「多世界」の実在』 コリン・ブルース著

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いきなり「量子力学の解釈問題」と言われても、何のことかピンと来る人はあんまりいないでしょう。訳者の和田純夫氏も「この本は、読者が量子力学の多少の基礎知識はもっているとの前提で~」と書いているし、一般向けではあっても初心者向けとは言い難い。
しかし物理学に関しては完全なるド素人の門外漢にすぎない自分も、この「問題」には以前から興味を持っていました。とりわけこの本の主要テーマである「多世界解釈」については、和田氏が同じブルーバックスで書いている『量子力学が語る世界像』で知って驚いた。

「多世界解釈」をものすごく大雑把に言えば、われわれが「現実」だと思っているこの世界の他にも、無数の可能的な世界が同時並行的に存在しているという考え方。『ドラえもん』でタイムマシンに乗って過去を変えに行くと、それまで続いていた世界とは別の“パラレルワールド”が生まれるなんて話があったと思いますが、イメージとしてはあんな感じか。ただ、「別の世界」はその定義からしてこの世界の中には含まれないのだから、そこに行くことはもちろん触れることも見ることも、何らかの情報を得ることは原理的に一切できないはず。ところがこの本によれば、少なくとも別世界が存在することについては、この世の実験で確かめることができるらしい。これは面白そうだ。

その前に、どうして「多世界解釈」なんてものが出てきたのか?
それを理解するにはまず「量子」について知らねばなりませんが、厳密に語るだけの力量も気力もないので暴力的に省略して説明。量子ってのは時間とか長さとかの最小の単位で、それよりも小さい値は存在しない。信じられないかもしれないけど、そういうのがあるんです。
原子を形作る電子や陽子、中性子なんていう量子レベルの大きさの存在になると、単なる「ものすごく小さい粒」というだけでは片づけられない性質を持つようになる。たとえば、ゴマ粒ならある時点にどこに存在しているかを正確に言い表すことができるし、それを爪で弾いて飛ばせばある一つの軌跡を描いて飛んでいくことしかできない。だけど量子レベルの大きさの粒子だと、基本的に「いまどこにあるか」「どんな動きをしているか」などは決まっていない。ただ、それを「観測」したときにのみ、それらが一つに決まる。
これがいわゆる「ハイゼンベルクの不確定性原理」。
観測するまでは「観測していないから」不明なのではなく、「全く決まっていない」。
このことは「量子は粒子と波動の両方の性質を持っている」などと表現されます。(この性質は、有名な2スリット実験で確かめられる)


「これはどういうことなのか?」を考えるのが「量子力学の解釈問題」ってやつで、長らく「コペンハーゲン解釈」というものが有力でした。誰かが観測するまでは「状態A」「状態B」「状態C」…など、ただ「確率の波の大小」のみで表される無数の状態が同じ粒子の中で重なり合っていて、どれにも決まっていないのだ、と。つまり、この世界の中である量子が観測された結果、一つの状態に定まるのだ、という考え方。しかしこれは、直感的には分かりづらい。だからシュレーディンガーの猫みたいな奇怪なパラドックスも、皮肉混じりに考案されたりしました。

これに対して、近ごろ有力になりつつあるらしい「多世界解釈」は至ってシンプル。「状態の重ね合わせ」なんか存在しない。ある量子が、観測された瞬間に「状態A」である世界と「状態B」である世界、「状態C」である世界はどれも同じように存在していて、我々はたまたまどれかの世界に存在してそれを「現実」と呼んでいるにすぎない、と考える。われわれのマクロの世界もそれら量子レベルの粒子からできているのだから、この考えを拡張すれば無数の想定可能な世界が現実に存在していることになる。ジョン・レノンが「想像してごらん」と歌った完全な平和が達成された世界も、それと程遠いこの世界とは別に実際に存在しているのかもしれない。http://x5.nobody.jp/bin/ll?062899800.gif


これは「生物はどうしてこんなふうに都合よく進化したのか?」ではなく「ランダムな突然変異の結果、たまたま生き残るのに都合が良かった遺伝子だけが生き残った」と考えるダーウィンの進化論や、「他の天体はすべて地球の周りを回っている(よりによってどうして地球を?)」ではなく「地球も他の多くの天体と同じように存在していて、回転しているのは地球ののほうだ」と考えるコペルニクスの地動説にも通じる発想の大転換。いずれもムダな説明を要しない分、オッカムの剃刀にも適っていると言えるでしょう。
さらに言えば、「親宇宙」から「子宇宙」が生まれ、さらに「孫宇宙」が…と無数の宇宙が存在する可能性を指摘する近年の宇宙論の研究や、分析哲学における可能世界意味論ともオーバーラップして、実に深淵なものを感じる。興味は尽きません。


で、いよいよ別世界の存在を確かめるための実験についてですが…。
…まだ読んでいる途中なので、興味を持たれた方はご自分で確かめてみてください。


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コメント

コメント(12)
No title
詳細な説明、ありがとうございます。少し(だけ?)理解できました。(苦笑)
以前、「量子力学」 の考え方を知りたくていろいろな入門書を読みましたが、私には大まかなところしか分かりませんでした。
今は 「場」 の問題、ちょっとくらいは理解したいな~と目論んでいますが、いつになることやら……。

長尾啓生

2008/07/19 05:00 URL 編集返信
No title
おいラッパ。
宿題とホームページはどーなったんだ?

r*d*u*g*2*0l

2008/07/20 01:08 URL 編集返信
No title
私も「場」についてイマイチよく分かってないので、勉強したいと思ってます。要するに音が空気を媒介して伝わるのと同じように、光も「場」を媒介して伝わるんだと理解していますが、それは科学史のある時期まで想定されていた「エーテル」とはどう違うのか。たぶん全然違うんでしょう(笑)

Jinne Lou

2008/07/20 01:38 URL 編集返信
No title
おいおい、ラッパ。ラッパのお前が何を勉強するってんだい?

お前はまず「人道」ってやつを勉強しろよ。

r*d*u*g*2*0l

2008/07/20 19:37 URL 編集返信
No title
場を理解するとすれば、電磁気学の近接作用と遠隔作用の部分を考えるのが、まずはいいのではないかと思いまする。ラッパってなに?

tou*uhy**uchi*

2008/07/21 23:01 URL 編集返信
No title
おお、百珍さんお久しぶりです。
そうですか。なにぶん素人が気まぐれで学んでいるので、基礎からみっちりやろうという熱意はあんまりないもんで。竹内薫氏がブルーバックスで「場」のことについて書いていたと思うので、そのうち読んでみようと思います。
ラッパはたしか金管楽器の一種じゃなかったですか。トランペットやコルネット、フリューゲルホーンなんかの総称だと思います。

Jinne Lou

2008/07/21 23:36 URL 編集返信
No title
百珍さん、ラッパの説明をしましょうか?

ここのラッパは本当にラッパの意味がわかってないようで。
educationのないjournalistは困ったものですね。

r*d*u*g*2*0l

2008/07/23 01:45 URL 編集返信
No title
特に説明はいりませんよ。そんな総称だと思っておきまする(笑)近接作用と遠隔作用の発想の転換は、決定的に物理の考え方を変えたように思います。凄く端的にはクーロンの法則のところですねぇ。

tou*uhy**uchi*

2008/07/27 14:57 URL 編集返信
No title
もともとは重力も、瞬時に伝わる遠隔作用だと考えられていたんですよね。でも重力もやはり「場」を通して間接的に伝わる近接作用で、光速より速く伝わるわけではない、と。

Jinne Lou

2008/07/28 01:54 URL 編集返信
No title
このやり方って、アフリエイトとか言う方式ですか。それとも、あくまでも、個人的な紹介?私も時間に余裕がとれれば、良心的な書物の紹介をやりたいと思っているのですが?
■お友達の皆さん、今日は。お友達になっていただいて、出来れば毎日でも、お邪魔したいのですが、思うにまかせず失礼しております。今日はまた、厚かましくも、最近投稿した下記のブログを手土産にお邪魔しました。例によって、関心とお時間のある方は、ご覧の上、コメント、トラックバックいただければ幸いです。ご多忙の方や、関心のない方は、無視乃至は、お手数ながら削除下さい。
ウオール街の危機を救う方法 ー マイケル・ムーアの手紙
この記事のURL: http://blogs.yahoo.co.jp/biwalakesix/3335047.html

琵琶

2008/11/15 13:41 URL 編集返信
No title
《続》
■首相の基礎資格を疑うー単なる読み違えで済ませるか?
この記事のURL: http://blogs.yahoo.co.jp/biwalakesix/3405744.html
■◎日本、98位に後退=男女平等度、トップはノルウェー
この記事のURL: http://blogs.yahoo.co.jp/biwalakesix/3401377.html
■田母神氏、三権分立否定? 軍部独裁の危険も!
この記事のURL: http://blogs.yahoo.co.jp/biwalakesix/3308070.html

琵琶

2008/11/15 13:42 URL 編集返信
No title
以前にはCDや本の紹介のついでにアマゾンのアフィリエイトを試みたこともあるんですが、全然儲からないのでやめました。これは純然たる本の紹介で、便宜上リンクを貼り付けただけです。
記事のお知らせありがとうございました。

Jinne Lou

2008/11/15 13:44 URL 編集返信
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