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誤用に御用!

7割の人が「憮然=腹立て」と誤用、文化庁の国語世論調査

 日本語の慣用句や言葉の使い方について、文化庁が世論調査した結果、70%以上の人が「檄(げき)を飛ばす」や「憮然(ぶぜん)」の本来の意味を取り違えていたことがわかった / 議論などで結果が出る「煮詰まる」についても、40%近くが「議論が行き詰まり結論が出せない状態になること」と逆の意味に思い込んでいた / 調査は今年3月、全国の16歳以上の男女3445人を対象に行われた / 「檄を飛ばす」は「自分の主張や考えを広く人々に知らせて同意を求める」というのが本来の意味。選択肢の中から正答を選んだのは19%にとどまり、73%が「元気のない者に刺激を与えて活気づけること」と回答した。「憮然」についても「腹を立てている様子」と誤った答えを選んだ人が71%に上り、「失望してぼんやりしている様子」と理解している人は17%だけだった / また「卑劣な方法で失敗させられる」という意味の慣用句は「足をすくわれる」が正しい答えだが、74%の人が「足下をすくわれる」と回答、「足元を見る」という表現と混同していた / 「話などの要点」を意味する「さわり」も正しく回答したのは35%で、55%は「話などの最初の部分」と勘違いしていた。特に「煮詰まる」は世代間で使い方に大きな開きがあり、「結論の出る状態」とする回答は50歳以上は70%を超えたのに対し、16~19歳は16%だった。

7月24日22時2分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080724-00000068-yom-soci


言葉やその意味の変化をどう捉えるかについての評価は、一概にどれが正しいとも言えないと思います。
ただ、合理的な変化というものは確かにある。たとえば「新しい」は奈良時代までは「あらたしい」と読んでいたらしいけど、その後に「あたらしい」と読まれるようになったのも、おそらくそのほうが発音しやすいからでしょう。あくまでも推測ですが。

似た例として、最近では「雰囲気」を「ふいんき」と読む人が多数派になりつつあるらしい(キーボードで「ふいんき」と入力しても変換されない!とお困りの方も多いとのこと)。http://x5.nobody.jp/bin/ll?062899800.gif
たしかに「ん」の後に母音の「い」が来るよりは、逆のほうが読みやすいとは思う。しかし漢字を1文字だけ含む訓読み語である「新しい」の読みを「あたらしい」に変更するのと比べて、音読みの熟語である「雰囲気」を「ふいんき」とするのはかなりハードルが高い気がします。これを分解したら「雰」「囲」はそれぞれ何と読めばいいんだ?ってことにもなる。



それはそれとして、上記のような変化を主導しているのはむしろメディアの側だという事実に、この記事を書いた記者はどれほど自覚的なのか。たとえば当の『読売』のサイトをちょっと検索しただけでも、「憮然」も「檄をとばす」も誤用例がしっかり出てくる。むしろ誤用しているケースのほうが圧倒的に多い。

一般の人々に「誤用」が増えているとすれば、こうした誤用例が頻出するメディアの日本語表現に引きずられた結果でしょう。「憮然」「檄を飛ばす」「足をすくわれる」なんて言葉は、日常語としてよりはメディアを通して触れる機会のほうがはるかに多いはずです。
無論『読売』に限った話ではなく、大手新聞社のサイトを検索すればいくらでも出てくる。

五輪成功が至上命題である胡錦濤指導部にとって…
→「命題」とは「すべてのポストは赤い」「飛べない鳥が存在する」のような真偽の判断の対象となる文章のことで、「命令」「課題」といった意味は本来含まない。


ブランドうなぎの真実 漁協ぐるみの“確信犯”
→「確信犯」とは、政治テロのように「その行為が正しい」と確信して行う犯行のことで、「悪いと知っていながらやる」という意味ではない。


朝青龍「別に…」 勝ち越しも憮然、エリカ節
→「憮然」の誤用。


押しも押されぬ67歳の大物ジャズマンのハービー
→「押しも押されもせぬ」の誤り。


役不足のところをどうクリアするか、が個人的な課題です・・・
→「役不足」は力量に比べて役目が軽すぎること。「能力不足」という意味ではない。


姑息なことに校長室から「彼に君の裸の写真送る」と脅していた
→「姑息」は「その場しのぎ」のこと。「卑怯」「コソコソしている」といった意味は含まない。


〈文化庁が発表した平成18年度「国語に関する世論調査」では、『彼には役不足の仕事だ』を、本来の意味である『本人の力量に対して役目が軽すぎること』で使う人が40.3パーセント、間違った意味『本人の力量に対して役目が重すぎること』で使う人が50.3パーセントと、逆転した結果が出ている〉とのこと(『大辞林』の注釈より)。

最近の辞書では、本来は誤用である「命題」や「確信犯」の上記のような用法も併記するものが増えているようです(さすがに「役不足」はまだない)。
このうち、「命題」はまだ許容できる気もする。「こだわり」も本来とは逆のプラスイメージの意味が完全に定着しているけど、これも言葉の変化としては一定の合理性が感じられる。
ただし「確信犯」や「役不足」のような、完全に異なる、あるいは正反対の意味の用法が混在する状況はやはり良くないんじゃないか。また「姑息」の例のように、字の意味から離れた用法が幅を利かすのもあまり好ましくなさそうです。
少なくとも大手メディアは、そうした言葉の用法には保守的であってもらいたい。

…などと書いておいて、この記事に言葉の誤用が含まれていたら恥ずかしい。
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コメント

コメント(19)
No title
3Kの誤用はおもしろいっすね。あれだけ「日本語が乱れている」とか言っておきながら。

tom

2008/07/25 09:54 URL 編集返信
No title
転載します~~。

tom

2008/07/25 09:55 URL 編集返信
No title
そうですよね。メディアでこのような誤用例、たしかに何度も目にしています。だから「ぜんぜんOKよ!」てなことになるのよね。

sta*sto*y60

2008/07/25 20:08 URL 編集返信
No title
>tomさん

SKはたまたま検索機能が充実していたのでたくさんヒットしましたが、他のとこも似たり寄ったりだと思います。新聞社の校閲部の人たちもみんな間違えて覚えている証拠でしょう。

Jinne Lou

2008/07/25 23:57 URL 編集返信
No title
>starさん

そうですね。うちの新聞も全く他社のこと言えないんですがね。
こんなのもありました。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/OSK200702240017.html
「体力的に潮時と判断した」とあるけど、「潮時」は単に「好機」という意味で、これだけでは「撤退すべき頃合い」は意味しない。

Jinne Lou

2008/07/26 00:03 URL 編集返信
No title
さすが本職ライターのJinneさんならではのタイムリーな記事ですね。そうか、メディアでもこんなに間違っているのか、、、。実は私自身、今回の使い方間違いの例の中で、指摘されてるような間違いをしていたものが多々あって年甲斐もなく恥ずかしい、、と思っていたところなんですよ。言葉の用法では「保守派」なものですから、、。

gru**y_c*cli*t49

2008/07/26 00:05 URL 編集返信
No title
かく言う私も、間違えて覚えている言葉はまだまだ多いんじゃないかと思います。
最近まで「とんでもありません」「とんでもございません」というのは普通の敬語(丁寧語)だと思っていましたが、「とんでもない」で一つの言葉なので、それらは本当は間違いだそうです。

Jinne Lou

2008/07/26 00:35 URL 編集返信
No title
丁寧に言うなら「とんでもないことでございます」だと、聞いたことがあります。TVのアナウンサーなども使っている「~ますでしょうか?」というのも、語尾が「ますです」になっていて可笑しな表現のようです。一見丁寧そうに聞こえるので、好んで使われるのでしょうか?「休まさせてください」とか、へりくだりすぎで下心ありすぎ、、、。

gru**y_c*cli*t49

2008/07/26 12:35 URL 編集返信
No title
そこまで大げさな言葉づかいも変ですが、敬語はどうも「~ございます」が正しいとされているようですね。単に「とんでもないです」でいいと思うんですが。
サービス業特有の言葉づかいでは「~となっております」も耳障りです。

Jinne Lou

2008/07/27 02:53 URL 編集返信
No title
さすがJinneさん。しかし本職の記者さんでも誤用している方が多いようですね。私などたくさん誤用していました。こりゃいかん。
曹操の時代の話を読んでいるとよく「檄文」というのが出てくるので、檄を飛ばすの本来の意味に納得。

lotusrayeighty

2008/07/27 18:21 URL 編集返信
No title
言葉って難しいですね。言葉の意味や使い方は日常の会話の中でおぼえていきますから、多数の人が間違って使えば他の人にもうつってしまいますよね。私は「7割の人」なので、少しずつ意識しておぼえていかないと・・・。

pho*b*_weat*er*cau*f*eld

2008/07/27 20:16 URL 編集返信
No title
「いらっしゃいますか?」が正しくて「おられますか?」はおかしいと思っていたら、両方通用するんだと知って驚いたことがありました。
サービス業界で耳障りなのは「~でよろしかったでしょうか?」です。
昔は「~でよろしいでしょうか?」だったと思うんですが、いつから過去形で確認するようになったんだろう…
誤用と言えば、レイの松岡さんが自殺した時に安倍ちゃんが「慙愧に耐えない」って発言してるのを聞いた時頭の中が?マークの大洪水になりました。
後でマスコミも騒ぎ出したので、間違っていたのは自分じゃなくて安倍ちゃんだったか…と思ったことを思い出しました。

まけお

2008/07/27 20:26 URL 編集返信
No title
まあ、これは私も自信ないですね。本来の意味が変化して、それが正用法になってしまう、というのはどの言語にもあると思います。学部生のころ、近世の文書を読まされましたが、「振りまわしよき」という言葉が出てきました。今で言う「羽振りの良い」という意味だったと思います。

och**obor*maru

2008/07/28 00:17 URL 編集返信
No title
>Lotusさん

私のいた大学でも、たまに「檄」というタイトルのアジビラを見ました。
おそらく「激励」の「激」と字が似ているので、「励ます」という意味の誤用が広まったんでしょう。

Jinne Lou

2008/07/28 02:02 URL 編集返信
No title
>phoebeさん

大勢が誤用している状況では、意識して正しく使う人の存在も必要でしょうね。

Jinne Lou

2008/07/28 02:06 URL 編集返信
No title
>まけおさん

ほう。「おられますか」は正しいんですか?「おる(居る)」は謙譲語なので、尊敬語の「られる」と組み合わせるのはおかしいんじゃないかと私も思っていたんですが。似た例として「申される」というのもありますが、これはどうなんでしょうね。

Jinne Lou

2008/07/28 02:09 URL 編集返信
No title
>NANAMIさん

たしかに古語辞典を見ると、同じ言葉でも現代とはかなり違う意味で使われているものが多いですよね。「むつかし=気持ち悪い」「はづかし=優れた」「おとなし=しっかりしてる」など。
現代語の意味も、やがてがらりと変わっていくんでしょう。

Jinne Lou

2008/07/28 02:17 URL 編集返信
No title
こんなページを見つけました。
http://starscafe.net/kotoba/misuse/

tom@いやし系(ら抜き)

2008/07/30 08:56 URL 編集返信
No title
自分も間違って使ってそうな言葉がちらほらありました。「圧巻」あたりが怪しい。

ここには出てないけど、われわれ業界紙の記者も99.9%間違って覚えているのが「量目」の読み方。「りょうめ」が正しいらしいですが、皆ほぼ例外なく「りょうもく」と読んでる。取材先もみんな間違ってるから仕方ないけど、商品の内容量変更を指す「量目変更」なんかは完全に誤読が広まってます。

Jinne Lou

2008/07/31 01:24 URL 編集返信
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