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“粗さがし”報道と短絡思考の結託

「派遣村」にいたのは誰だったのか?

 年末年始にかけて東京・日比谷公園に突然姿を現した「年越し派遣村」。集まった約500人は、一部の新聞やテレビで「企業による派遣切りで職と住まいを失った人ばかり」などと紹介されたが、その“実態”は年が明けるに連れて次第に明らかになってきた。“村民”とは誰だったのか。そして、“村”の運営にはどのような人たちがあたったのか。そこには、ある特定のイデオロギーを持った政治色が潜んでいたことがわかる。(以下略)

1月18日18時32分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090118-00000535-san-soci

いかにも産経らしい記事で面白いが、この記事を真に受けた人々からは早速にも「派遣村はみんなサヨク」「政治的に利用されてたんだろ」「単にホームレスが集まっていただけ」といったナイーブな反応が(案の定)出てきています。

そりゃあこういう集団でデモをやれば、共産党系の労組だって加わるだろうし、「憲法をまもれ」と主張する人たちだっているでしょう(これは憲法25条に関わる問題でもある)。それらの人々は普段からからこうした労働問題に敏感なわけで、「ある特定のイデオロギーを持った政治色が潜んでいた」などと大層な言い方をするほどのことなのか。団体名だってみんなべつに隠していないだろうし、なにをもって「潜んでいた」などと表現する必要があるのか。

日比谷公園の周辺には相当数の野宿生活者がいるわけで、寒空の下でこうした取り組みをすれば大勢集まってくるのもべつに不思議なことではない。(それでも全体の1割に満たなかったってんだから、むしろ少ないくらいじゃないか?遠慮してた人が多かったんでしょう) 主催者もそれを隠してはいないし、現にこの記者も主催者側が公表したアンケート結果でそれを知ったわけです。で、それが何かいけないことなのか?派遣村の取り組みがなければ年を越せなかったかもしれない、元派遣労働者をはじめとした困窮者が現実に大勢存在していた。その現実に対して、自分では(おそらく)何もしなかった人々が、勝手に作り上げた先入観をこうした記事で“確認”して溜飲を下げているのではないか。

この手の反応をする人たちは、どうしてこう物事の捉え方が単純なんだろうか。「派遣村のデモに左翼系の組織が関わっていた」というだけで「派遣村は特定の思想集団に牛耳られていた」と考えてしまったり、「たくさんのホームレスがいた」というだけで「派遣村はホームレスの集まりだった」と思ってしまったり。http://x7.ifdef.jp/bin/ll?098060900.gif
彼らには、いろんな背景を持った雑多な人間の群れが、一つの目的のために集まるということが理解できない。何かを訴えている集団は均質な一枚岩で、特定のイデオロギーに支配されているという“分かりやすい”構図でしか見ようとしない。
当然、責任を追及される側の政府や経済界にも、いろんな考えを持ったいろんな人間がいて、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、せめぎ合いながら社会が成り立っているわけです。
それを前提にしなければ、今起こっている問題の本質にはちっとも到達できないでしょう。
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コメント

コメント(20)
No title
かつて、ブッシュ大統領は、「自国民に衣食住を保障できない政治指導者に怒りを覚える」と北朝鮮の事を批判しましたが、オバマ大統の就任式当日も、全米で、1千万人を超える人々が、炊き出しに並んでいます。貧困率1位のアメリカと2位の日本。むしろこれまで放置されてきたホームレスに光を当てた記事こそ知らせるのが、良識あるジャーナリストの取るべき態度です。

琵琶

2009/01/21 14:06 URL 編集返信
No title
斜めからのコメントばかりになります。ご容赦を。

マスコミ全社がこのような見方になったら問題ですが、物事を違う角度から捕らえることは重要ではないでしょうか。「派遣村」に関しては、当初1方向からの記事しかなかった事の方が心配でした。重箱の隅、というよりは角度を変えた視点、と捉えています。
村内で「総選挙で政治を変えよう!」「消費税値上げ反対!」などの主張があったり、「憲法を守ろう」などのスローガンが大きく掲げられたりしたなら、報道するのは当然だと思います。また、派遣社員は4割だったなど、実体としては記事にするべき内容だと思います。

mid**i4127

2009/01/21 16:24 URL 編集返信
No title
主催者や支持者が宣伝したいことだけを伝えろ、という事になりますと、それこそ「政治」「イデオロギー」のため、となってしまうのではないでしょうか。ありのままを報道、と言う意味では、こういった角度からの記事も必要だと思います。だめでしょか?

mid**i4127

2009/01/21 16:28 URL 編集返信
No title
はじめまして。記事の内容、まさに私が感じていたことを文章化してくださったように思えたので、コメント残します。
傑作を。

kiyory

2009/01/21 18:16 URL 編集返信
No title
粗探し?
いや、政権批判の材料にしている団体が存在する時点で
粗探しの言葉で済ませる問題じゃないだろ。
考えが単純ではないだろうか?

ゆめちよ

2009/01/21 22:50 URL 編集返信
No title
>NANAMIさん

文春は未読ですが、なぜ政府への批判だけそらそうとするんでしょうね。無論、派遣業者や労組も批判は免れないでしょうが。実際、派遣業者と個人で闘っている人もいるし、既存労組へのアンチテーゼを唱える運動も出てきています。しかし規制緩和の名の下に、構造的に今の状況を生み出してきた政府が批判されるのは当然でしょう。

Jinne Lou

2009/01/22 01:25 URL 編集返信
No title
>琵琶さん

世界第1と第2の経済大国とされる両国で、時を同じくして似たような光景が現れるのは象徴的な事態ですね。異常な事態が、それと気づかれることなく水面下で進行して一気に爆発した結果でしょう。サブプライム問題を思わせます。

Jinne Lou

2009/01/22 01:25 URL 編集返信
No title
>みどりさん

そうした見方は当然あり得ます。誰も「主催者や支持者が宣伝したいことだけを伝えろ」という趣旨の主張はしていません。事実を伝えるのは当たり前ですが、その事実の選択と伝え方の文脈によって、書き手の立場が問われます。たとえばここでは、「派遣村」の活動に政治的な主張が入り込んでいたという「客観的事実」をもって、「弱者を政治的に利用していたという側面はなかったのだろうか」という主観的意見の材料にしている。他にも「ある特定のイデオロギーを持った政治色」「イデオロギー色」「イデオロギー的なもの」といった表現の多用によって、暗に特定の政治思想を広めるための活動であることを印象付けようという意図があることは明らかです。単に事実を報じるだけならいいが、その事実によって伝えようと意図するところが誤っていると考えたので批判しています。

Jinne Lou

2009/01/22 01:26 URL 編集返信
No title
>kiyoryさん

これでもまだうまく文章化できている感じがしないので、もどかしい思いがあります。
でも傑作ポチありがとうございました。

Jinne Lou

2009/01/22 01:26 URL 編集返信
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>どんこさん

記事中ではまさにそうした言説を批判しているので、それだけでは反論にはなりません。もう一度よく読んでください。政府の政策によって起こった問題について、政権を批判するのは当たり前です。

Jinne Lou

2009/01/22 01:26 URL 編集返信
No title
議会民主主義体制化の社会において、何らかの要求を行なう場合、そこに「政治性」が付着する事は避けがたいでしょう。私が、以前足を運んだ拉致問題関連の集会でも「改憲」を主張する声が堂々と出てましたからね。産経や文春の記事が批判足りえるとすれば、それは、既存の労組が事実上非正規雇用を維持する体制派に加担しているというようなことを、固有名詞を上げた上で、データを添えて論証したような場合で、上の産経のような書き方だと、単なる事実矮小化の意図に基づいた、揚げ足取りというほかないですね。

och**obor*maru

2009/01/22 18:33 URL 編集返信
No title
たしかにこういう場合、「政治的」「イデオロギー色がある」という批判は自分と異なる政治的意見の運動に対して用いられますね。労働者側に立つ政治的スタンスを明確にしている派遣村の活動に対して、無意味な批判でしょう。

Jinne Lou

2009/01/23 01:12 URL 編集返信
No title
私は難しいことは、判りません。
ですが、一部の情報だけで物事を見ないでほしいです。
私も派遣村に参加してきました。そこには確かにいろいろな団体の方が居ました。
しかし、目の前に居る救いを求めている人たちの為に集まってきたのです。先ず救わなくてはいけない、これはみんな共通していたと思います。私はこの目で派遣村を見てきました。私もあの中に居た一人かもしれない人でした。

-

2009/01/23 01:25 URL 編集返信
No title
どんな団体がいたか、路上生活者がどれくらいいたかなどを知ることは必要かもしれませんが、問題の本質ではありません。瑣末なことにこだわった本末転倒な論が、目の前にある問題の解決にどれくらい役に立つんでしょうかね。現実に困っている人たちがいて、それをなんとかするために雑多な人たちがなりふり構わず行動した。意味があるのはその単純な事実です。

Jinne Lou

2009/01/23 01:53 URL 編集返信
No title
派遣村を非難するのは簡単です、突き詰めて集約すれば『自己責任』・・それを何故救済だという論法でしょう。

そういう考えの方々はこの派遣村を『社会鍋』や『慈善事業』賭して捉えているとも思えます。
『慈善事業』でこの労働問題を解決出来るのでしょうか・・見識を疑います。

この派遣切りにあった方々は労働法はじめ経済界と大企業優先で労働者の権利も人間としての存在すらも否定するような法案があっての事です。

そして長きに渡り路上政活をしている方々多くはバブル崩壊が原点でもあると思います。
どちらも政治や社会が無関係の個人の自己責任でしょうか?

努力が足りない、努力すれば道はあるとい事は簡単です。
しかしバブルではすべてを失っい、派遣法ではそれしか生きる糧を得られない方も多いんです。

今や非正規が全労働社の三分の一・・とも言われる現実をどう考えるのでしょう。

ポチ&転載。

ワンチャン

2009/01/23 19:54 URL 編集返信
No title
始めまして。ワンチャンの転載記事で知りました。サンケイの記事は、財界の謀略です。
私もポチ&転載させてください。

希土暁宣

2009/01/23 22:13 URL 編集返信
No title
>ワンチャンさん

たしかにこれは慈善というよりは、追い詰められた者同士のやむにやまれぬ共闘だと思います。そこで完結するものではなく、最終的には社会を変えることにつながらねばなりません。構造そのものを変えなければ、今後こうした問題はいつまでも続くでしょう。ポチ&転載ありがとうございます。

Jinne Lou

2009/01/24 01:07 URL 編集返信
No title
>希土さん

謀略だとは思いませんが、こうした構図で問題を矮小化したい人々は財界に多いかもしれません。
ポチ&転載ありがとうございます。

Jinne Lou

2009/01/24 01:09 URL 編集返信
No title
そうですね。

「自由な雇用形態」とやらの理想的お題目のもと、簡単に首を切れる雇用形態に成り下がってしまったのですね。(雇う側としてはバンザイなのでしょうけど)

院生も大変です。「高学歴ニート」などと言われる、院卒の人材余り状態が生じています。雇用があったとしても、任期付きが大半だったりしますし。

綾波シンジ

2009/01/24 03:16 URL 編集返信
No title
自由になったのは雇う側ばかりで、働く側は実質的には選択肢を狭められてきた、あるいはより質の低い選択肢を強いられてきたと言えるでしょう。

院卒やポスドクの就職難も厳しいようですね。詳しくは知りませんが、大学で研究職にありついて食っていくのも大変だと聞きます。

Jinne Lou

2009/01/25 01:57 URL 編集返信
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