FC2ブログ

『新潮』島村手記問題の不可解

週刊新潮「本社襲撃犯」手記 「真実性なし」本社判断

 記者2人が殺傷された87年5月の朝日新聞阪神支局襲撃事件(02年に公訴時効成立)をめぐり、週刊新潮は「自分が実行犯だ」とする島村征憲(まさのり)氏(65)の手記を1月下旬から4回にわたって掲載した。朝日新聞は06年に島村氏と面会しており、他の取材結果とも合わせて検証した結果、手記には事実と異なる点が数多く含まれ、真実性はないと判断した。警察庁など捜査当局も「島村氏の証言は信用できず、事件に関与した可能性はない」とみている。(以下略)

2/23付『朝日』朝刊
http://www.asahi.com/national/update/0222/OSK200902220043.html

この件に関しては『新潮』での連載開始当初から、その内容を疑問視する報道が相次いでいますね。週刊文春も、普段は新潮とともに敵対することが多い朝日と形の上では共闘しながら、同連載の信ぴょう性のなさを書き立てている。
一連の連載と、今回の『朝日』の検証記事をざっと読んでみても、やはり島村氏の「告白」は不可解だと思わざるを得ません。

朝日の検証記事の見出しは「虚言 そのまま掲載」。“虚言の疑い”とかじゃなく“虚言”とはっきり断じているところを見ても、当事者たる朝日の怒りは相当なものがありそうです。それはそうでしょう。暴力で言論を屈伏させようとした卑劣な事件を執念で追ってきた記者たちにしてみれば、すでに過去の取材で犯人ではないと判断した相手の話が、いい加減な記事であたかも真実として蒸し返されたわけですから。真実に迫る努力に水を差すことに他なりません。

島村氏の言い分は、虚言と断じられても仕方がない。個々の話の矛盾についてはすでにいろんな記事で指摘されていますが、たとえば06年に受けた朝日の取材に対しては「初めから小堀記者がターゲットだった」という趣旨のことを述べておきながら、新潮の手記では「誰でも良かった」という正反対の言い分になっている。

もっと基本的なところでは、87年1月24日の東京本社銃撃事件の日付を1月3日としていたり、静岡支局に仕掛けた時限爆弾のコードの片方を切断していた、などとすでに警察の捜査などで客観的に裏付けられた事実であっさり否定される言い分が平気で出てくる。

朝日の取材に対しては、阪神支局事件の凶器は「上下2連の7連発自動銃」と答えていたという(新潮手記では「水平2連の2連発」になっている)。2連式なら2連発に決まっているし、7連発なんてあり得ない。それに自動的に薬きょうが排出される自動銃なら2連式にする意味がないので、そんな銃は存在しないわけだ。朝日記者が、これを聞いた時点で「犯人ではあり得ない」と確信したのももっともな話です。

新潮の記事で致命的なのは、島村氏の証言に出てくる人物(犯行を指示した米大使館員、共犯の部下、犯行声明をタイプライターで打った女etc.)への取材の形跡がないこと(それらの人物の実在は確認しているとのことですが)。池袋で小規模な右翼活動をしていたという(警察は否定している)当時の島村氏を知る人物の証言も一切出てこない。核心部分はほとんど100%島村氏の証言に依拠していて、第三者による裏付けがないのは、言い訳できない欠陥ではないのか。

この手記が虚偽ということになると、じゃあ島村氏はなぜそんなウソをついてまで犯人だと名乗ろうとしたのか?という部分に関心が移ります。刑法上の公訴時効が過ぎたとはいえ、民法では不法行為に基づく損害賠償請求が可能なわけで、殺人犯としての世間的な不名誉や賠償金を支払わされるリスクを負ってまでウソの告白をしたからには、それなりの理由がありそうです。

彼が朝日の言論を憎む根っからの右翼活動家であれば、事件を利用して活動家としての名を広めようとすることも考えられるでしょう。でも彼の手記を読んでいると、政治的な思想性というものが全く感じられません。単にカネ欲しさのために事件を起こしたと言っているし、右翼としての名誉欲という線はないように思える。じゃあ一体何だろう。

今後は、こうしたウソが出てきた背景の解明が待たれるところです。
スポンサーサイト



コメント

コメント(10)
No title
うーん。マスコミの裏側。興味深く読ませていただきました。

希土暁宣

2009/02/24 08:51 URL 編集返信
No title
こうした朝日などの批判に対する新潮側の「言い訳」はちゃんと出てくるんでしょうかね。。

tom@いやし系(ら抜き)

2009/02/24 11:42 URL 編集返信
No title
深読みすれば、新潮は、雇用問題に目をむけささせたくないのかも知れませんね。

激しい記事で世論をこっちに向けさせ、雇用関係から当座ける。

ハザマ

2009/02/24 20:25 URL 編集返信
No title
>希土さん

いや、裏側というほどのものではありませんが。記事を読んだ限りでの感想です。

Jinne Lou

2009/02/25 01:43 URL 編集返信
No title
>tomさん

一応、連載の末尾では「手記の矛盾が指摘されていることは承知している」とか「仮に虚偽だとすれば、これまでの報道と矛盾のない内容にすることは簡単だったはずだ」とかいった意味の言い訳をしていましたが、誰もが認めざるを得ない客観的事実とも矛盾してるんだから、苦しい言い逃れと言わざるを得ませんね。

Jinne Lou

2009/02/25 01:54 URL 編集返信
No title
>破入さん

そうでしょうか。そんなことが言えるなら、雇用関係以外のすべての記事について当てはまってしまうと思いますが。

Jinne Lou

2009/02/25 01:56 URL 編集返信
No title
・・・・すいません、軽率でした。

ハザマ

2009/02/25 04:22 URL 編集返信
No title
これからはレスは慎重に致します。

ハザマ

2009/02/28 00:25 URL 編集返信
No title
いや、べつにいいです。

Jinne Lou

2009/02/28 01:38 URL 編集返信
No title
いえいえ。

ハザマ

2009/02/28 10:18 URL 編集返信
コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

Jinne Lou

Author:Jinne Lou
個人>国家
公共≠国家

月別アーカイブ