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選挙制度を科学する

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先月発売の『Newton』10月号をだらだらと読んでいる。特集「原子の正体」や、「エッシャーの騙し絵」を立体的に再現する方法についての記事も興味深いが、意外に面白かったのが「選挙を『数学的』に考えてみよう!」という数ページの企画だった。

以前に紹介したコンドルセのパラドクスのほか、小選挙区制のもとで2大政党制に近づく仕組みを原理的に考察。同制度では、「デルヴェルジェの法則」と「3乗比の法則」なる法則が顕著に表れるため、2大政党化が促進されるそうだ。

デルヴェルジェの法則は、「選挙を重ねるごとに、選挙区の定数に対して当選圏内の候補者数が『定数+1人』に近づいていく」というもの。
報道などで伝わってくる選挙情勢から、当選する見込みのない候補よりも、当選圏内にいる候補の中から「よりまし」な候補を選ぼうとする心理が働くことは自然だろう。その結果として、定数1の小選挙区においては実質的に候補者2人の争いになるのが必然の流れというわけだ。
小選挙区では共産党への投票を諦め民主党に投票せざるを得なかった者として、これは直感的にも分かりやすい。


もう一つが、3乗比の法則。小選挙区制のもとで各政党が獲得する議席数は、得票数の比率をそれぞれ3乗した比率に近づくというもの。
たとえば得票数が2:3なら、予想される議席数は(2×2×2):(3×3×3)になる。つまり、得票率の差がより強調されて議席数に表れるということだ。

これを今回の選挙結果に当てはめて、民主・自民の得票数、それに基づく予想議席数、実際の獲得議席数(いずれも小選挙区のみ)をグラフにしてみた。
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ここでの「予想議席数」は、3乗比の法則を用いて得票率から導き出した比率。
得票率が55:45なので、「55の3乗:45の3乗」を計算するとおおむね65:35になる。それぞれを3乗したことで、得票数の差がより強調されている。
しかし実際に獲得した議席数は78:22となり、3乗比よりもさらに差が極端に開いている。理論と現実が合っていないように見えるが、4年前の「郵政選挙」のケースでも予想議席数が自民69:民主31だったのに対し、獲得議席数は81:19とあまり一致していない。
一方、その前の2003年の総選挙では、63:37に対して62:38とほぼ一致している。
3乗比の法則というのはそもそも「数学的に導き出されるわけではない経験則」(聖学院大大学院・松原望教授)だそうなので、そう毎回一致するわけでもないのだろう。あるいは上記の結果をみる限りでは、郵政選挙や政権交代選挙のように選挙戦が盛り上がるほど、3乗比の理論値よりも差が極端になる傾向があるのかもしれない。


いずれにせよ「選挙制度に『正解』はない」(松原教授)とのことだが、たとえば比例代表制に一本化したら有権者の投票行動はどう変わるのか、国会の勢力図はどんなことになっていくのか、興味のあるところだ。

それにしても「選挙制度を科学する」とは、素人の分際で大仰なタイトルをつけてしまった。
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コメント

コメント(14)
No title
完全比例にしたら・・・、興味深いですね
個人ではなく、政党のみを選ぶわけですから、「政党政治」というものにより近付くと思いますし、政策重視という点で、民意を反映しやすいものになるように思います

○○先生後援会もなくなりますねぇ~

北欧がそうですが、選挙に金がかからない
二大政党制ではなく常に連立政権、個人的に好ましいです

Bianchi (ex gaar)

2009/09/19 02:48 URL 編集返信
No title
てっきり「恋愛を科学した」鳩山さんの論文かと思いました・・・

6:4でもメディアの影響で7:3、8:2に加速しそうなのは、体感的に感じます・・・

かいざぁー

2009/09/19 06:27 URL 編集返信
No title
3乗比の法則は、憲法の教科書では普通に書かれてることですが、実際に計算してみたことはないです。とはいえ、場合によっては、3乗どころではないずれが生じるんですね。

憲法の教員なら、実際に自分で計算しててしかるべきだろ!と言われそうですが…今度の選挙制度の講義の際に、これ使わせてもらいますね。

tom@いやし系(ら抜き)

2009/09/19 10:30 URL 編集返信
No title
今回の選挙の民社国の小選挙区での得票率は5割程度です。民主に至っては、47%程度。つまり、議席からすれば、民主が大勝したような感じですが、実際は違う。これは小泉の郵政選挙の時もそうです。この度の結果を、完全比例にした場合、共産は35議席近くになり、民主は200程度、自民は130程になるようです。公明も増えるでしょうね。言えることは、現在の選挙制度は、民意を正しく反映していないということです。民主が、比例の定数削減をマニフェストに入れていますが、これが実現すると、選挙結果は、ますます民意からかけ離れたものになります。社民が連立に加わってますから、もしズルズルいってしまったら、目も当てられません。成立すれば、少数政党は、消滅の危機に瀕するわけですからね。この部分に関しては、野党共闘で阻止しなくてはならんでしょう。

och**obor*maru

2009/09/19 12:48 URL 編集返信
No title
>gaarさん

私も連立政権を基本にした多党制が望ましいと思っています。そのためにも、完全比例を実現してもらいたい。

Jinne Lou

2009/09/20 09:42 URL 編集返信
No title
>カイザーさん

やはりメディアの影響は大きいでしょうね。
理系の鳩山氏にの科学的合理主義に基づいた政治を期待します。

Jinne Lou

2009/09/20 09:44 URL 編集返信
No title
>tomさん

そうなんですか。最近ではこの計算から外れるケースが多くなってきているのかもしれません。
ぜひとも講義に使ってみて、生徒さんの感想を教えてください。

Jinne Lou

2009/09/20 09:48 URL 編集返信
No title
>NANAMIさん

全くそうですね。本来なら、少数政党ももっと議席を獲得していていいはずです。民主党の岡田氏は比例削減を強硬に主張していますが、二大政党というブルドーザーが少数意見を有無を言わさず圧殺していくことにつながります。この点で社民党は、歯止めをかけるために政権内で是非ともがんばってもらいたい。

Jinne Lou

2009/09/20 09:51 URL 編集返信
No title
やっぱり小選挙区制度のひずみが数字にも表れているんですね。
これで民主党の言う通り、比例を80も削減したら民意はますます国会に届かなくなります。
小選挙区こそなくすべきですね。
完全比例を望みます。

まけお

2009/09/25 09:36 URL 編集返信
No title
完全比例だと、人を選択できなくなりますし、政党中央の力が必要以上に強くなります。加えて、無所属議員が立候補できなくなります。

そういったデメリットを考えると、完全比例よりも、以前のような中選挙区制がいいんじゃないかと思ってます。

tom@いやし系(ら抜き)

2009/09/25 18:46 URL 編集返信
No title
>まけおさん

民主党と自民党しかなくなったら、9条改憲反対の政党も、政党助成金反対の政党もいなくなりますからね。マジョリティだけによるマジョリティだけのための政治になります。

Jinne Lou

2009/09/26 00:41 URL 編集返信
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>tomさん

たしかにそうしたデメリットはありますね。
参院選で実施されている非拘束名簿方式も、人が選べるようになる反面で、選挙戦の費用が膨らんだり人気取りのためにタレント候補が乱立したりといった弊害があります。無所属候補の問題もある。しかしそうした面を考慮しても、民意反映の正確性は大きなメリットだと思います。今の小選挙区を中選挙区に戻して、比例との並立制にするのもいいんじゃないでしょうか。

Jinne Lou

2009/09/26 00:50 URL 編集返信
No title
jinneさん、グラフも美しいし、転載させてくださ~い

Bianchi (ex gaar)

2009/09/26 03:21 URL 編集返信
No title
転載ありがとうございます。

Jinne Lou

2009/09/29 00:26 URL 編集返信
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