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未読書日記21 『よくわかる最新時間論の基本と仕組み』竹内薫 著

この書庫もたまには書かねばならない。というわけで例によって未読書ネタでお茶を濁す。未読と言っても、すでに八割方読み終えているのだが。


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時間論の入門書的なものはこれまで何冊も読んだが、これは理系オンチにもずば抜けて分かりやすい点でお薦めである。一つ一つの項目が2、3ページずつコンパクトにまとまっていて、図版も多用しているので視覚的にも理解しやすい。説明の仕方も、言葉が平易なだけでなくアナロジーなどを駆使しており、数式の分からない素人にもイメージがつかみやすい。さすが竹内薫。この種の本を手に取る人間のツボをよく心得ている。

内容のほうは古今東西の「時間」の歴史に始まり、カントやベルクソンらの哲学的考察、人間の時間認識の仕組み、次元やエントロピー、相対論、量子力学、超ひも理論、量子重力理論、そしてタイムマシンといった、時間論では外せない定番の話題をほぼ網羅している。

興味深いのが「時間はなぜ目に見えないのか?」という問いである。
時間は空間と同様に次元の成分の一つとされる。3次元空間+1次元時間の「4次元時空」が、われわれが住む世界ということになる。

空間のほうは、縦、横、高さという3つの軸(=3次元)を視覚的に捉えることができるが、時間のほうはそうはいかない。「過去→未来」という1本の軸を認識しようとすれば、時計や天体の動きなど物質の空間的な運動を通して間接的に知るしかない。だが数式上は、時間も空間成分とほぼ同様に扱うことができるらしい(時間だけはマイナスの符号が付くようだが)。ではどうして、時間だけは直接見えず、空間と全く違ったあり方をしているように見えるのか?

ここではとりあえず、時間は空間と違って「過去→未来」という1次元的な広がりしか持たず、それを「探査」するためのもう一つの次元がないから、という説明が試みられる。
後半では、この問いについて再度考察。その答えとして、新たに4つの可能性を提示している。この中で納得感が高いのが「人間の脳は、そもそも3次元までの広がりしか認識できない構造になっている。だから、4つ目の広がりである時間は、人間にははっきりとは認識できない」という説明。「時間」とはわれわれがこの世界を観察するときに用いる便利な概念の枠であり、実際には存在していないのではないか、というのが筆者の考えのようだ。
これは「空間および時間は我々の感性の形式的条件にすぎない」(『プロレゴメナ』)とするカントの考え方に近いだろう。
時間や空間について、考えれば考えるほど不思議な気分になるのは、そもそもそれらは我々が「考える」際に不可欠な形式であるからなのかもしれない。

相対性理論によれば、時間と空間には相対的な違いしかなく、ある人にとっての「時間」は、他の人にとっては「空間」でありうるのだという。
突き詰めて言えば、本質的に存在しているのは「時間」ではなく「(光の)速さ」なんだそうで、究極的には「素粒子のスピン(回転)」という“現象”が、この物質世界を織りなす根元ということになるらしい。

この世界が「モノ」からできているように見えるのは実は幻影で、森羅万象は「コト」に還元できるかもしれないのだ。



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コメント

コメント(6)
No title
興味深いです。

すべてが「コト」に還元されるとしたら、記憶である意識も、時間という錯覚を生み出す森羅万象のひとつのできごととして、ようやくどこかに落ち着いていけるかもしれませんね。

一度くらい、ホーキング(理系)の頭の体験をしてみたいものです。その時、目の前の景色はいったいどんなふうに見えるのか、とか。

TKK@tkkhkkdmk

2009/12/20 01:27 URL 編集返信
No title
そもそも「モノ」とは何かを考えると、結局はわれわれの意識や感覚で捉えられる以上の存在であることをどうやっても確かめることはできないわけで、その意味だけでも「すべてはコト」であると言えそうです。ここで示されている事実は、意識上だけでなく「実際に」すべてはコトなんだということなので、何か世界に対する我々の見方を根底から変える可能性もありそうです。
私もホーキング博士のように、この世界の根本について深く知ることができたらさぞかし面面白かろうと思います。

Jinne Lou

2009/12/20 02:48 URL 編集返信
No title
時間については、私自身、「空間」との認知が強いのだと思います。
実生活においても、あの時愉しかったね、という表現より、あの空間は愉しかった、という表現を使用する事が多いです。

文系 理系はどこで、区別するのか、疑問は残りますが、
国語や、社会の成績より、数学や物理の方が格段によかった私は、(私個人としては、残念なのですが)、理系なのでしょう。

もう少し深いコメントをしたかったのですが、冴えてる時にさせていただきますね。

Bianchi (ex gaar)

2009/12/21 02:21 URL 編集返信
No title
そうでしょうか。私は「あのときは楽しかった」とは言っても「あの空間は楽しかった」とは言いませんが…。

私は数学は大の苦手で、テストで1ケタの点数を取ることもしばしばでした。数学って実は楽しそうだということだけは、近年になって分かってきましたが。

Jinne Lou

2009/12/21 02:27 URL 編集返信
No title
この本、読んでみたくなりました。

読書って、未読(完読する前の途中)の時のほうが、いろいろインスプレーションが沸いて、人にも伝えたくなりますよね。
たぶん思考が広がっている状態なんでしょうね。
読み終えて、イザ書評なり感想を・・・となると、意外と言葉が出てこないの。
面白くて完成度の高いものほどそう。
無理やり自分の中でまとめようとするからなんでしょうか。
けっこうありきたりの感想になってしまったりして、自分の感性や理解能力にがっかりしたりします。
えーと、私も場合ですけど・・・

kiyory

2009/12/22 00:04 URL 編集返信
No title
そうですね。だから私もあえて未読のまま書評(ってほどでもないが)を書いてます。読了してから書くとなると、ちゃんと全体を網羅して正確に書かねばならない気がして面倒です。

Jinne Lou

2009/12/22 03:17 URL 編集返信
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