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普天間問題 ――メディア雑観

【主張】「首相発言」案 手続きより打開策決めよ

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、政府が5月末までにまとめる対処方針の扱いについて、平野博文官房長官が「首相発言ということでペーパーを出して了解する方法もある」との考えを示した ( 略 ) だが、今は政府内の手続き論を考えている場合ではなかろう。最優先で取り組まねばならないのは、日米合意に基づいてキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)に移設する現行案に立ち返り、沖縄県民や国民に対して謝罪することである。打開策といえる現行案を、鳩山由紀夫首相が決断することが先決だ( 以下略 )

2010.5.19 03:25 産経新聞

鳩山政権は、沖縄県民に対して謝罪せねばならない。その通りだ。
だがここでの「沖縄県民に謝罪せよ」とする“主張”は、「県外移設しようと努力したけど、やっぱり無理でした。公約が守れずごめんなさい」と謝罪しろ、という意味ではないだろう。
「最優先で取り組まねばならないのは」「キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)に移設する現行案に立ち返」ることだと主張する『産経』は、そもそも普天間基地を県外移設すべきではないとの立場である。したがって、同紙が言う「謝罪」とは「実現すべきではない誤った公約によって、県民の皆さんに甘い期待を抱かせてしまいました。ごめんなさい」という意味である。

米軍基地というそれ自体地元にとってなんらメリットのない迷惑至極な施設を、沖縄に対して半永久的に押し付けようとする無礼千万な論理を振りかざすのが、『産経』に代表される厚顔無恥な本土メディアである。
そのような分際で、曲がりなりにも県民の負担軽減のために県外移設を試みた側に向かって「沖縄県民に謝罪せよ」とは一体どういう論理の倒錯か。「地政学的条件」とか「抑止力の維持」とかいう大義名分のもと当然のように犠牲を強いておきながら、さも沖縄のことを思いやっているかのごときポーズで尤もらしく政権に諭す。その偽善性に虫唾が走る。




一方、ある週刊誌は今週号で以下のような特集を組んだ。

普天間返還後の基地建設は必要ない!
沖縄に基地を造りたいのは、実は日本のほうだった。
辺野古に基地ができても、海兵隊の沖縄撤退は既定路線

【担当編集からのコメント】
普天間基地返還に伴い、代替施設をどこに造るかでモメている。鳩山首相は最近になって「県内移設」に傾き始めた。ところが、「海兵隊はほとんどグアムに移るので、新基地建設は必要ない」と主張する人々がいる。米軍資料や証言の裏付けもあるというが、本当なのか!?

Web SPA!

何を隠そう、同じくフジサンケイグループに属する扶桑社の週刊誌『SPA!』(前身は『週刊サンケイ』)の特集である。

横田一氏らによるこのルポの詳細は同誌に譲るが、おおむね見出し通りの内容である。「県内の海兵隊1万8000人」という数字の根拠のあやふやさに始まり、「中国・北朝鮮の脅威への抑止力として在沖海兵隊は必要」とする論理が時代遅れになりつつあることも指摘している。言うまでもなく『産経』本紙の主張とは真っ向から対立する趣旨の記事であり、むしろ『週刊金曜日』に掲載されていたほうが違和感がない。
『新しい歴史教科書』の版元としても知られる扶桑社だが、その代表的な媒体である『SPA!』はサンケイ色をほとんど感じさせないばかりか、こうした180度異なる主張の記事が掲載されることもしばしばである。これは以前から興味深く感じていた点だ。

小林よしのり氏が今のようにおかしくなる以前の『ゴーマニズム宣言』が掲載されていた当時(約15年前まで)の『SPA!』は毎号のように購読していたものだが、今回かなり久々に買ったら80円値上がりして380円になっていたのであった。
ついでに言えば、大好きだった投稿ページ「バカはサイレンで泣く」がいまだ健在なのは良かった。

そういえば、先週号だったかの『週刊朝日』の「ニッポンの新『正論』」なるワイド特集では、「中国への土下座外交をやめよ」とする金美齢氏の文章が載っていた。それこそ『正論』誌に載っていても違和感がない。今週号では楡周平氏や城繁幸氏のネオリベ的主張も展開されている。新聞社系の週刊誌が、新聞本紙とは立場が異なる記事を掲載することはそう珍しくないのかもしれない。




普天間問題に関しては、先週号の『週刊文春』に内田樹氏が寄稿している論評が最も正鵠を射ていると思われる。以下、抄録する。

…鳩山首相が明確なビジョンを示さず、ダッチロールしていることをメディアはきびしく咎めているが、それはメディアが「明確なビジョン」を示しているからではない。メディアは「米政府も政権与党も沖縄県民もみなが満足する解決策」を早く出せと言いたてているだけである( 略 )私たちが望みうる最良のものは「当事者全員が同程度に不満な落としどころ」である( 略 )「三方一両損」のソリューションを見つけるのが、基地問題についての政府の仕事である。こういう細かい計算仕事をしているときに、怒号や罵倒や憂国の至情はあまり役に立たない。そのような激しい感情は「そもそもどうして外国の軍隊の基地が日本国内になければいけないのか」という、より本質的な問題を論じるときに取っていおいた方がよい( 略 )東アジアの軍事的緊張に備えることがそれほど喫緊であれば、米軍が韓国内の基地を三分の一に縮小したり、アジア最大のフィリピンのクラーク、スービック両基地を返還したのはほとんど「狂気の沙汰」と言わねばならない。東アジア全域で米軍が基地縮小に動いている中、日本だけがその流れから取り残されているのは、要するにわが国がアメリカに侮られているからである(以下略)                 『週刊文春』5/20号
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コメント

コメント(15)
No title
普天間問題、、沖縄への米軍基地の集中問題は収束しない。
何故なら、買収資金が、日本の財政では、維持できないまでに金の面で、危機を迎えているから。
平和は、自らの死の恐怖、もしくは、金不足から、もたらされる。

櫻(N)

2010/05/21 07:55 URL 編集返信
No title
金美齢が週刊朝日にですか。
週刊誌の新聞広告はよく読んでるんですが、それは気づきませんでした。

ゆまりん

2010/05/21 09:31 URL 編集返信
No title
SPAには、以前(6年くらい前ですかね)、難民問題に取り組んでいる知り合いの弁護士が出てましたので、買いました。あの時以来、SPAについては、産経グループという意識はあまりないですね。

にしても、産経新聞の倒錯ぶりは無茶苦茶ですな。自分たちの論理の倒錯に気づいてないあたり、産経のレベルが知れますね。

tom@いやし系(ら抜き)

2010/05/21 13:26 URL 編集返信
No title
出版社そのものと、媒体とは、その政治的色合いは異なるでしょうね。週刊新潮は保守的ですが、その新潮社が出している、文芸雑誌『考える人』あたりは、わりとリベラルです。朝日の媒体は、右旋回していると思います。本紙は、主筆の船橋洋一が日米同盟を基軸にしたリアリストで、彼の影響が大きいと思います。朝日新聞はおそらく、内部でかなり右左の綱引きがあると思いますが、西部邁が産経から追い出されて、朝日に載ったりする昨今ですから、言論媒体を、正確に右左で区別するのはほとんど意味がないようにも思います。新左翼系の田中優子が産経の一面にコラム書いたりしてますしね。それだけ、時代が混沌としてきたということだと思います。

ちなみに、吉本隆明は、朝日新聞は戦争を乗り越えてもいないし、反省もしていないから、戦争が始ったら、確実に「やれ、やれ」と、言いだすに決まっている、と色々なところで書いていましたが、本当だと思います。

och**obor*maru

2010/05/21 21:15 URL 編集返信
No title
アメリカ政府に侮られているの件は、加藤典洋の日本主体論に通じるところでもあると思いますが、ただ、安保反対の左派でも「アメリカの洗脳教育」とか「アメリカの奴隷」なんて言葉を振り回す場合があるのは注意が必要です。それらは、保守派の「GHG洗脳自虐史観」論と相似形なので、それで仮に、日米安保を解消したとしても、改憲圧力に屈して、日本「軍」が沖縄に大量移動するようなことになると、目も当てられません。

och**obor*maru

2010/05/21 21:20 URL 編集返信
No title
反動勢力のたくらみを乗り越えて、歴史は進んで行く。

琵琶

2010/05/22 02:40 URL 編集返信
No title
>sakura(M)さん

面白い視点ですが、買収資金の危機というのは本当にそうなんでしょうか。

Jinne Lou

2010/05/22 02:54 URL 編集返信
No title
>ゆまりんさん

ワイド特集の中の一項目の扱いでしたからね。

Jinne Lou

2010/05/22 02:55 URL 編集返信
No title
>tomさん

そうでしたか。イラク戦争に関しても、産経新聞とはかなり異なるスタンスで報じていたと思います。
産経は昨年に、「対馬が韓国資本に買収されつつある」とかいうキャンペーンを張っていました。実態をみればそんな事態は全くないようなのですが、一般紙の中ではイデオロギー色が最も強い同紙では、こうした理性でなく感情に訴えかける手法が際立っています。

Jinne Lou

2010/05/22 03:03 URL 編集返信
No title
>NANAMIさん

新潮社も、媒体によって一概には言えませんね。『新潮45』は中瀬ゆかり編集長時代に、以前のような『諸君!』『正論』路線とは一線を画して女性向けの誌面作りをしていましたが、最近編集長が交代してからまた色合いが変わってきたようです。『週刊新潮』は総合週刊誌の中ではかなり保守色が強いほうですが、井上ひさし氏が亡くなったときにはかなり好意的な追悼記事を掲載していたと記憶してます。文芸作品で稼がせてくれてる井上氏や大江氏のことは、あまり悪しざまに書けないのかもしれません。

私もCIA陰謀論とか9.11陰謀論とか、妄想じみた反米主義には左右問わずついていけません。

Jinne Lou

2010/05/22 03:14 URL 編集返信
No title
>琵琶さん

そう理想通りに運ぶといいですね。

Jinne Lou

2010/05/22 03:14 URL 編集返信
No title
簡単に理想通りには進みませんが、着実に、民衆のエネルギーは高まってきていると思います。
ブロガーは、その道しるべになりたいものです!

琵琶

2010/05/22 13:18 URL 編集返信
No title
私もJinneさんと同じ頃にSPAを読んでいました。
なんか『ダッチロール』ってすごく懐かしい(なんて言ったら不謹慎でしょうか)単語を久々に見ましたが、沖縄入りして【抑止力】の大切さがわかったとかどっかののーたりんが言ってましたが、こんなのーたりんには党をまとめる力はないと思います。
大いなる公約違反を色々なんのかんのと修飾して基地を辺野古に移設するしかないと世論を騙そうとしている姿は心から軽蔑します。

まけお

2010/05/23 19:09 URL 編集返信
No title
しかし、県外移設など検討すらしなかった旧政権の政治家が口を極めて現政権を非難しているのを見ると、「おまえらに言う資格があるのか」と言いたくなります。
稚拙な戦略しか持たなかった鳩山氏は結局は節を曲げて最悪の結論に達しましたが、初めて県外移設に真正面から取り組んだことはそれなりに評価すべきでしょう。そうでなければ、本土の関心もここまで高まりませんでした。

Jinne Lou

2010/05/25 01:19 URL 編集返信
No title
んんん…言われてみればそうですね。
昨夏の選挙も基地問題への取り組みに期待して票を入れた人も多かったと思います。
有言不実行になってしまいましたが、基地問題を沖縄県民だけでなく、国中の人々の関心事にしたことは確かに評価すべきですね。
のーたりんなんて言ってごめんね、ユッキー。

まけお

2010/06/02 20:21 URL 編集返信
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