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未読書日記26 「脳と意識」(『Newton』 5月号)

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久々のNewtonである。
まだざっと読んでいる途中だが、予想の範囲内の内容とはいえ、よく分からなかった事柄について詳しく知ることができて興味深い。
だが哲学的な見地からいえば、いわゆる他我問題の不思議さについては、科学的アプローチがほとんど無力であることをますます強く再確認させられる。

本特集でも縷々述べられているように、「意識」というものは何らかの実体ではなく、物理的な存在としての脳の内部における電気的・化学的作用によって生み出される一種の“現象”であると思っている。
つまり、ニューロン同士がシナプスを介して電気信号や神経伝達物質をやり取りするという、純粋な物理的過程の結果として起こる現象だ。
そこを説明するのに、肉体とは独立した「霊魂」の類を持ち出すことは、いろいろな意味で不合理だと思う。

しかし、純粋に脳の物理的な機能によって「意識」が生じると考えると、それはそれで不可解な事柄も多い。
よく言われるのは、「クオリア」の存在だ。たとえば、ある波長の電磁波が網膜を経由して脳に伝えられると、特定の「色」として認識される。それは一応、物理的な過程として説明できるのだが、そのときに感じる「赤」とか「青」とかいう色から受ける“生々しい感じ”は、物理的な作用だけではどうにも説明がつかないように思われる。

ただ、それ以上に分からないのは「私の意識」という意識の独特なあり方である。他我問題とか独我論とか呼ばれる、哲学の古典的難問の一つだ。

「意識」には、全く異なるあり方をしている2種類がある。すなわち「私の意識」と「他者の意識」である。
「私の意識」は他でもない世界に一つだけの“この”脳から生じ、ここを起点に世界を認識している。他の人間が感じていることは、私には直接感じることができない。
その意味で「他者の意識」は、私にとって単なる想像上の存在いともいえる。

あるとき、双子が生まれたとしよう。そのうちAが「私」で、もう一人のBは「私の兄」だった。同様の物理的過程で生み出されて対等な立場にあるはずの2つの意識に、一体どんな要素が加わればこのような違いが生じるのか。

なんらかの意識を持つ存在が「私」について思考している以上、特定の肉体に宿る意識が「私の意識」となることは必然だろう。論理法則すら超越できる神でもない限り、特定の主体を持たない意識はあり得ないからだ。
ただ、地球上に70億以上も存在する人間の脳はいずれも同様の物理的過程によって「意識」を生じさせているにもかかわらず、特定の一つが「私の意識」という特別な存在になることには、何か拭いがたい不思議さを感じてしまう。
どの意識も、それを持つ各人にとっては「私の意識」であるという意味で、何ら特別ではないとも言える。そこがまたややこしいところでもあるのだが。しかし「特別な意識などない」という、いわば意識の等質性が客観的には存在するとしても、それを認識しようとするのはやはり「他でもない“この私”の意識」という特権的な存在でしかあり得ないのではないか。
だけど「他でもない“この私”の意識」なんてものは、やはり各人がそれぞれに持っているので何も特別ではないのではないか…などと、思考の堂々巡りに陥ってしまう。

意識が意識について考えるという自己言及的な状況が、問題を難解にさせているのだろうか。それとも、この種の“問題”はすべて大いなる錯覚に基づく疑似問題でしかないのか。

と、書いているうちにNewtonの特集内容からはだいぶ外れてしまったが、まぁいいか。
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コメント

コメント(5)
No title
《だけど「他でもない“この私”の意識」なんてものは、やはり各人が それぞれに持っているので何も特別ではないのではないか…などと、思考の堂々巡りに陥ってしまう。》

久しぶりに、哲学的思考を楽しませていただきました。

琵琶

2012/04/04 04:16 URL 編集返信
No title
むむむむずかしい…ただいまうつ病絶好調なのを差し引いてもなかなか理解できない。
こないだやらされたロールシャッハテスト並みに難しいです。

まけお

2012/04/13 22:51 URL 編集返信
No title
問題が理解できないとすれば私の書き方が良くないのであって、非常にシンプルなことを言っているにすぎません。シンプルすぎて、かえって説明するのが難しいというのもありますが。
ただその問題を解決することは、最高レベルの科学的・哲学的難題だと思います。

Jinne Lou

2012/04/16 02:23 URL 編集返信
No title
多分、全ての人は、"私"、なんですね。

ふと、気が付いたら、私[の意識]。

興味深い話題のご提供、いつも、有難うございます。

TKK@tkkhkkdmk

2012/04/27 02:21 URL 編集返信
No title
お久しぶりですね。
私にとって私は私ですが、私でない人にとっても私は私なんでしょう。
ただ私にとってそれは想像する以外にありません。

Jinne Lou

2012/04/27 23:02 URL 編集返信
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