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スペクタクル社会、完成へ

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世の中ライブドア騒動一色ですが、最高裁でこんな判断が示されました。

建物への落書きは「建造物損壊」、最高裁初判断

 公園のトイレにペンキで「戦争反対」などと落書きしたとして、建造物損壊の罪に問われた東京都杉並区の書店員****に対し、最高裁第3小法廷(浜田邦夫裁判長)は、上告を棄却する決定をした。
 決定は17日付。懲役1年2月、執行猶予3年とした1、2審判決が確定する。建物への落書きに建造物損壊罪が成立するとした最高裁の初判断で、同小法廷は「建物の外観や美観を著しく汚損し、原状回復に困難を生じさせたのは、損壊に当たる」と述べた。
 壁を壊すなど建物の機能を損なった場合は明らかに同罪が成立するが、落書きについては明確な司法判断がなく、拘留(30日未満)と科料(1万円未満)の罰則しかない軽犯罪法違反を適用することが多かった。今後は、5年以下の懲役が科される同罪を適用しやすくなり、商店街のシャッターなどへの落書きが社会問題化する中で、抑止効果が期待できそうだ。
 1、2審判決によると、**被告は2003年4月、杉並区の区立公園内にある公衆トイレの外壁に、赤や黒のスプレー式のペンキを使って、「戦争反対」「反戦」などと大きな文字で落書きした。
 弁護側は、「落書きがあったからトイレを使用できないと思う人はおらず、建物の機能を損なっていないから、建造物損壊罪は成立しない」と無罪を主張していた。(読売新聞) ※原記事中、**は実名。

落書きが「建造物損壊」??? 上に掲げた写真がその落書きですが、これを見て「あ、公衆トイレが壊れてる」と思う人がいるでしょうか。内容はちょっと珍しいけど、形式だけ見れば「○○連合参上!夜露死苦」とか「喧嘩上等」とか「○○殺す!!」とかと同じように、どこにでもある普通の落書きの一つにすぎません。「建物の外観や美観を著しく汚損し、原状回復に困難を生じさせた」というのであれば、その隣に以前から描いてあった「悪」(?)という落書きはすでに「建物の外観や美観を著しく汚損し」ていなかったんでしょうか。

一般的に言って、公共の施設に落書きをするのは良くないことですね。しかし通常は「みだりに他人の家屋その他の工作物に貼り札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者」は勾留(30日未満)又は科料(1万円未満)に処せられると定めた軽犯罪法第1条33項による処分で済んでいるのが実情。この落書きも、すでに落書きやその他の汚れで「美観を著しく汚損」していたところに付け加えただけなんだから、軽犯罪法で十分というのが常識的な感覚ではないでしょうか。

ところがこの被告は、当初は器物損壊容疑で現行犯逮捕された後に44日も勾留されたうえ、その後に罪状を建造物損壊へとわざわざ格上げされて起訴にまで持ち込まれました。その挙句が、実刑は免れたとはいえ「懲役1年2月」とは…。落書きに対してここまで厳しい判決は、おそらく前代未聞です。

表面上は「建造物損壊」として裁かれたこの事件。しかしその実情を見れば、やはり「反戦」「スペクタクル社会」という落書きの「内容」が問題とされていることは疑いようがありません。でなければ、たかが落書き事件に公安警察が動いた理由をどう説明するんでしょうか。「商店街のシャッターなどへの落書きが社会問題化する中で、抑止効果が期待できそうだ」って、『読売』記者の認識は所詮その程度ですか。

公安による捜索・取調べの実態について、被告は最終意見陳述書で次のように明らかにしています。
私は本事件の翌日から起訴前まで、公安刑事の取調べをほぼ毎日受けました。(略)「君は戦争に反対なのか?」「最近あったイラク戦争をどう思う?」「スペクタクル社会とはどういう意味なんだ?」「君は今の社会に不満なのか?」といったことを言われました。こともあろうに落書き事件としては異例の家宅捜索を警察は行いました。数枚のビラ、賃貸契約書を押収されました。これが原因で私は借りていたアパートを追われる羽目になりました。
たかが落書き事件であれば、どうして個人の思想にこんなに執拗に立ち入る取調べや捜索が必要なんでしょうか。これは文字通り「思想犯」への取調べであり、公安は最初から特定の思想の持ち主を狙って検挙したことは明らかです。こうした実情をつぶさに見れば、たとえばこういうサイトに書かれている「落書きした内容が、『反戦』だったから逮捕されたなんて、要するに左巻きの被害妄想が増大した結果なのね」なんてお粗末な認識は持てないはずです。

落書きにある「スペクタクル社会」とは、フランスの思想家ギー・ドゥボールが1960年代に著書『スペクタクルの社会』で唱えた概念で、人々が受動的な観客の位置に押し込められた世界、映画の観客のようにただ眺めることしかできないという資本主義の究極の統治形態のこと。遠い国で起こっている戦争も、自国がそれに加担していく状況も、多くの人はテレビの前でただ眺めてなんとなく「まぁ仕方ないね」と受け入れるだけ。それに対して異を唱えたり目立った行動を起こそうとすれば、イラクで拘束された人質3人のように激しくバッシングされる社会。ビラ撒きや落書き程度のことで何週間も拘束されても、そんな「異質な」他人のことには無関心な人たちの群れ。IT長者の転落劇を眺めながら内心拍手喝采、束の間のカタルシスを得て、明日からまたいつもどおり会社や学校に向かうだけの毎日――。スペクタクル社会は、今まさに完成されつつあるのかもしれません。
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コメント

コメント(20)
No title
さぁ、それは私にも分かりません。何か一筋縄ではいかない背景でもあるんでしょうか。CIAの陰謀とか、アンドロメダ星人の地球侵略計画とか。

Jinne Lou

2006/01/21 01:19 URL 編集返信
No title
>グランピーさん こういうサイトの人は、体制側の行為はどこまでも好意的に解釈するのに、それに抵抗する側の人間に対しては初めから悪意と偏見を持って、口汚く罵ることしかできない人が多いようです。彼らは無自覚のうちに体制を補完する道具にされているのでしょう。それにしても、ホリエモン人気を利用していたメディアや政治家連中が、掌を返したようにバッシングに躍起になる様は本当に醜いと思います。

Jinne Lou

2006/01/21 01:41 URL 編集返信
No title
tom君とこにも書いたけど、この弾圧立川事件の前哨戦みたいなものだよ。従来軽犯罪法にしか問われなかった行為が、建造物損壊になってしまった。やがてはステ張りなどもそうなるかも知れない。路上ビラまきは道交法違反かな。そうやってすべての情宣行動が萎縮することを期待する連中がいる。

BORA

2006/01/21 08:47 URL 編集返信
No title
>soleaさん 立川事件でのsoleaさんたちへの弾圧と、全く同じ構図と言っていいと思います。実態とかけ離れた「治安悪化」が喧伝される風潮から、市民の間に「治安強化」を求める意識が高まっているのは事実。そこにつけこんで、こうした暴挙がやりやすくなっているのでは。外形的に「(軽微だけど)犯罪とされること」はほとんどの人が少なからずやっているはずですが、いったん検挙されてしまえば、どんな厳刑に処しても「悪いことをしたんだから当然」とする風潮が形成されていくのが恐ろしいです。

Jinne Lou

2006/01/21 13:52 URL 編集返信
No title
確かにひどいね、ココしばらくのホリエモンの扱い。しばらく前は凄く持ち上げていた人びと、どこいったんだよって感じ。

tou*uhy**uchi*

2006/01/21 13:59 URL 編集返信
No title
そもそも住民に通報されて逮捕された点について反省もなく、検察官へならともかく裁判官に暴言吐くような、なんの反省もない輩が制裁されただけ。最高裁まで粘るからとうとう最高裁判決が下りました。自分のやる行為は正義だから何をやっても許されるという信念が暴走した結果です。<公安は最初から特定の思想の持ち主を狙って検挙したことは明らかです。>ですって? 公安は住民が通報するまでこの被告が落書きするかどうかずっと監視していたんですか? <従来軽犯罪法にしか問われなかった行為が、建造物損壊になってしまった。>その判決を確定させたのは、たかだか落書き事件を公安権力による弾圧と定義して最高裁まで粘った無反省な被告とその取り巻きのおかげでしょう。good job!

she*g*ang_q*b*ng

2006/01/22 01:38 URL 編集返信
No title
裁判の対象となったのは「落書き事件」であって、被告やその取り巻きの法廷での態度ではありません。(彼らの態度はあまりに幼稚ではありましたが) 通報したのは住民でも、捜索&取調べを公安が担当したのは事実ですよね。落書きの内容と罪名が関係ないのであれば、なぜ単なる落書き事件に公安が? 落書き事件で、しかも現行犯逮捕で、なぜ家宅捜索が必要だったと考えるんですか? 落書きの余罪の証拠でも見つかると考えたとでも言うんでしょうか。全くナンセンス。こんな不自然な状況を、どこまでも警察に都合良く解釈できるんですね。

Jinne Lou

2006/01/22 02:08 URL 編集返信
No title
<裁判の対象となったのは「落書き事件」であって、被告やその取り巻きの法廷での態度ではありません。>そりゃそうだ。だけど裁判官の心証とかも影響あるでしょう。法廷で暴れるような反社会的な態度の被告に対しては判事も厳罰を書くでしょうしね。 <捜索&取調べを公安が担当したのは事実ですよね。落書きの内容と罪名が関係ないのであれば、なぜ単なる落書き事件に公安が? 落書き事件で、しかも現行犯逮捕で、なぜ家宅捜索が必要だったと考えるんですか?>あれだけの大規模な落書きを、しかも住民の通報で駆けつけた警官が現行犯逮捕するのは当然でしょう。 ただその後の操作(捜査でなく敢えて操作と書く)が公安によるものかどうかは別問題で、たしかに恣意的なものでしょう。だけど地裁判決で終わらず憲法判断をすべき最高裁まで争い、事後の裁判に確定的に影響を与えるであろう最高裁判例を導いてしまったことも事実。反体制の人々にとっては墓穴を掘ったということですね。

she*g*ang_q*b*ng

2006/01/22 10:37 URL 編集返信
No title
量刑や構成要件の適用が問題だとする意見もあるようですが、例えばタバコのポイ捨てでも法的には懲役五年を課することが可能です。嫌煙者の私としてはそういう判決が一度でも出て社会的抑止力になって欲しいですね。禁煙場所の喫煙でも現場で注意されごめんなさいで済む場合もあれば警官に逆ギレして現行犯逮捕される事件もありました。《「落書きは「持たざる者」の抵抗手段だ。「落書き」を否定する者の秩序を、私達の秩序で破壊してやろう。「落書きはいけない-犯罪だ」という者の物言いなど、聞くに値なし。 落書きを罰する法律なぞ、守る価値なし。 街路をとりもどせ!」》なんて反省の色もない輩は極端な例ですから、法で定められた範囲で最大限の量刑を課して良いでしょう。「お上に逆らう者は徹底的に潰す」はある意味法秩序を維持執行する現場での必然的現実的な知恵です。通常は常識や道徳的規範でなんとかなるのですが、それで手に負えないレベルだから法律が出てくるのです。悲しい世の中です。

she*g*ang_q*b*ng

2006/01/22 12:28 URL 編集返信
No title
私も嫌煙者で、マナーのない喫煙者にはその場で注意します。しかしタバコのポイ捨てに懲役5年は非常識だと思います。通常はそんな市民感覚からかけ離れた量刑は適用しないのに、警察や検察が気に入らない被疑者/被告に対してだけ恣意的に重い量刑を適用することには反対です。いずれにせよこれらの経緯を見れば、この事件で落書きの「内容」に対して当局が神経を尖らせていたことが、こうした量刑につながったことは否定できない事実でしょう。これは非常に重大かつ危険なことです。

Jinne Lou

2006/01/22 13:22 URL 編集返信
No title
「お上に逆らう者は徹底的に潰す」ことが、あなたは正しい(またはやむを得ない)と考えているんですか。あなたは権力者にでもなったつもりですか。これまでの歴史に何を学んできたんでしょうか。お話になりませんね。

Jinne Lou

2006/01/22 13:25 URL 編集返信
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<警察や検察が気に入らない被疑者/被告に対してだけ恣意的に重い量刑を適用することには反対です。>それについては同感ですし、ポイ捨て懲役五年が非常識というのも分かります。が、全く行為自体を反省もせずに逆ギレして法廷で暴れたりするような極端な例があればそうなりえる可能性はあるでしょう。<「お上に逆らう者は徹底的に潰す」ことが、あなたは正しい(またはやむを得ない)と考えているんですか。>現実世界はこうだということを述べているだけです。あるべき理念や理想とは別次元の話です。ところで自分が権力者になったと仮定して、彼らの思考を検証することは無意味ですか?

she*g*ang_q*b*ng

2006/01/22 17:59 URL 編集返信
No title
<これまでの歴史に何を学んできたんでしょうか。>賢者は歴史に学びますが、残念ながら現実は為政者含め愚者のほうが圧倒的多数です。人間の思考パターンは文明の発達と比例したりしません。有史以来繰り返され、今後も繰り返されるだろう事象について認識することこそ歴史に学ぶということです。例えば史記が書かれた時代と現代中国人は本質的になんら変わっていません。(いやむしろ道徳的には劣化しているかもしれません)だからこそ古典を学ぶのです。

she*g*ang_q*b*ng

2006/01/22 19:44 URL 編集返信
No title
「現実世界はこうだ」ということと理想が別なのは当然ですが、理不尽な現実について「現実だから仕方ない」と追認する言説には怒りを感じます。あなたの文章では、それが正しい/やむを得ないと考えているように思えます。私が言った歴史に学ぶとは、たとえばこのケースではマルティン・ニーメラーの(言ったとされる)有名な言葉について考えることがそれに当たります。http://blogs.dion.ne.jp/ryotak/archives/761903.html

Jinne Lou

2006/01/22 22:28 URL 編集返信
No title
追認とか積極的肯定なんかしませんよ。現実が実存するという意味での肯定は大いにやりますがね。だけど個々人の立場では現実に即していかに得するように損しないように立ち振る舞うか?それのほうが重要です。過激で極端な人がまれに存在して犠牲になることで新しい判例が生まれる。それはそれで社会にとっては有益なことですが、我々一般庶民がすべて習い行動する必要はありません。そこまで打たれ強くないですからね。むしろ草の根で穏健に意識を変え社会通念を変えていく地道な運動の方が大局的に重要でしょう。

she*g*ang_q*b*ng

2006/01/23 08:31 URL 編集返信
No title
マルティン・ニーメラーもいいけれど、私の場合韓非子や荀子などの法家思想の方が現実の社会の安定に有用だと考えます。そもそも本家本元の中国が仁愛の統治じゃなくて恐怖政治でやっていますものね。平気で安易に死刑にするし。怖いけどモラルが崩壊した社会ではそうならざるを得ないのでしょう。たとえ現状に不満な勢力が多数派になり革命が起こっても新たな皇帝なり共産党幹部がやっぱり同じようにいつしか前政権同様の恐怖政治を行う。これが歴史というものです。

she*g*ang_q*b*ng

2006/01/23 15:45 URL 編集返信
No title
お久しぶりです。なかなか訪問できませんでした。私もこのニュースには驚きました。おそらく書いた「人」や「内容」が特的の思想を持っているからということで下された判決だろうと思いました。行為に対する判決ではなく、思想に対する判決でしょう。司法の独立性はどこにいってしまったのでしょうか。大問題です。

pho*b*_weat*er*cau*f*eld

2006/02/05 15:18 URL 編集返信
No title
ご無沙汰でしたね。イラク戦争以来、左右にかかわらず体制に楯突く人間へのあからさまな弾圧が強まっているのを肌身で感じます。3年ほど前に自分が参加したデモでは、われわれの仲間が機動隊に暴行を受けた挙句に逮捕されました。左翼だけでなく、右翼の間でも危機感を募らせている人は多いようです。

Jinne Lou

2006/02/05 22:37 URL 編集返信
No title
はじめまして。imacocoといいます。 ファン登録ありがとうございました。 早速ですがTBさせていただきました。

ima**co_*ess*njah

2006/02/09 10:21 URL 編集返信
No title
TBありがとうございます。今後ともよろしく。

Jinne Lou

2006/02/09 23:54 URL 編集返信
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