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オーソリティーのファニーなロジック

「日本なんだから英語使うことねえんだよ、わけのわからない英語をね。だからね、日本語にうまく訳せばいいじゃないですか。そうすればもっとわかりやすいよ。『ジェンダー』とか『フリー』とか言ったって英語のわからない人はさっぱり、おじいさん、おばあさんはわからんよ、そんなものは。日本語でやってくれ、日本語で」
先月27日、記者会見で都知事の石原慎太郎が何やら怒っていました。「ジェンダーフリー」という言葉の使い方に誤解がないよう、努力するつもりはあるか――そう問われての発言。
http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000140601310002

「この言葉そのものがいい加減あいまいな言葉だしね。これにかまけてやっている性教育なるものの教育方針というのは全く違うし、グロテスクだし、私は反対ですね。あんなものは認められないね。恐らく日本人全体に審判させたら、99%がそっぽ向くと思うよ」
「ジェンダーフリー、男と女の性というものの格差を埋めていくというのは結構ですよ。しかしですね、彼らが具体的に提唱している幾つかの事案に関しては、とても常識で言って許容できないものがたくさんあるから。やっぱりそういう例外的な事例が、余り露骨にメディアに持ち上げられて出てくると、ジェンダーフリーの、ある正当性を持ったムーブメントでもね、私はやっぱり非常に誤解を受けると思いますよ。詳しくは教育長に聞いてください」(同会見にて石原)

このやりとりの元になったのは、こんな出来事。

人権講座:上野教授の講師を拒否 都教育庁が思い過ごし

 東京都国分寺市が、都の委託で計画していた人権学習の講座で、上野千鶴子・東大大学院教授(社会学)を講師に招こうとしたところ、都教育庁が「ジェンダー・フリーに対する都の見解に合わない」と委託を拒否していたことが分かった。都は一昨年8月、「ジェンダー・フリー」の用語や概念を使わない方針を打ち出したが、上野教授は「私はむしろジェンダー・フリーの用語を使うことは避けている。都の委託拒否は見識不足だ」と批判している。
(以下略)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060110k0000e040086000c.html

記事にもある通り、市が上野教授に対して人権意識をテーマに講演を依頼しようと都に相談しただけなんですが、都の担当者曰く「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」とのこと。
これ、理解できますか?

女性学の権威→「ジェンダー・フリー」の言葉や概念に触れる“可能性”がある→都の事業として認められない。

ある特定の分野の研究者であることだけを根拠に、都の事業から排除する。つまり都は事実上、特定の学問分野を否定する暴挙をやっているわけです。現代の自由主義の国家で、こんな野蛮なことをやっている自治体が他にあれば教えてください。

よく分からないんですが、都教委の「『ジェンダー・フリー』の用語は男女平等教育を推進する上で使用しないこと」とする見解は「男らしさや女らしさをすべて否定する意味で用いられていることがある」かららしい。だったら、そういう意味で用いなければ良いだけの話じゃないんですかね。反ジェンダー・フリー派が必ず引き合いに出すケースとして「(ジェンダー・フリーの考え方に基づいて)男女同室で着替えさせる小学校」や「男女混合の騎馬戦」なる“都市伝説”がありますが、これらがGFの考え方に基づいて行われた例は一つも確認されていません。

男女混合名簿もしばしば槍玉に上げられますが、これも使い勝手の問題でしょう。使いやすいほうを使えばいいだけの話。どちらか一方にせねばならない理由はないはずです。
そういえばCD屋のジャズ売り場でよく楽器別にアーティストが並べられていることがありますが、あれは不便極まりない。マイルス・デイヴィスだったらトランペットのコーナーをまず見つけてから、さらに「M」のイニシャルのコーナーを見つけねばならないので二度手間です。マイルスやトランペットみたいなメジャーなカテゴリならまだいいけど、ヴァイオリンのステファン・グラッペリなんてどこを探せばいいのか。「ヴァイオリン」コーナーがあるジャズ売り場なんて、まずないわけで。これはいつもホントに困る。イニシャルのアルファベット順で統一しろ! …と、これは余談でした。

「日本なんだから英語使うことねえんだよ、わけのわからない英語をね。だからね、日本語にうまく訳せばいいじゃないですか。そうすればもっとわかりやすいよ。『ジェンダー』とか『フリー』とか言ったって英語のわからない人はさっぱり、おじいさん、おばあさんはわからんよ、そんなものは。日本語でやってくれ、日本語で」
お説ごもっとも。全くおっしゃる通りで。センセイさぞかし立派な日本語をお使いなんでしょう。
というわけで、石原の過去の発言録をちょっと掘り起こしてみると…出るわ出るわ


「映像のもたらす非常に危険なサゼスチョンっていうのかな、悪い認識、間違った認識っていうのは、テレビゲームを通じて跋扈しているからね(略)そういうプロット(筋書き)というのは、私はやっぱり非常に好ましくないと思いますけどね」
「消費税というと、とにかく金を使うたびに取られちゃうんだというオブセッション(固定観念)があるけどね」
「たぶん、ここまで物事を完備して設置する、そういう重症のお子さんたち、アダルトの方も含めてですね、施設は世界にないと思います」
「ブラックボックスの部分はですね、国というものがハンドルしてるわけですからね」
「一つ新しいファクターが入ってきましたんで(略)それをもうちょっとアクティブにしてもらいたいね」
「トラファルガー広場なんていうのはハトで有名だったんだけど、やっぱりロンドンのオーソリティーがあそこで餌をやることを禁止しましたね」
「…それを勘案しながら、歴然とした経済活動を東京都のイニシアチブでやります」
ドメスティック(国内)でやった連中をまず立てようというのはわかるけども、やっぱり中村と高原、あの2人の出し方は遅かったと思うね」
「大きな対立のある政治イシュー(問題)ってのは…」
「この問題というのは、僕はフォーカスされると思いますよ」
「やっぱり人に感謝することのエクスタシーというのはあるんだね」
「最後は子どもにどうやってトレランス、こらえ性を植え付けていくか、培っていくかの問題だと私は思います」
「組織というもののひ弱さというのかな、アクティビティーというものがもう一つ欠けている」
「まあ、これは本当にね、そのうち、メモワールを書いたら1章を設けていいような出来事だよ」
「そういうものと重ねて都議会もそうなるというアナロジー(類推)というのは、全く政治の現実感覚を知らない人が言うことでね」
「個人的に親しい官僚のOBたちのアドバイザリーボードを持っていましてね」
「彼らもアーティストとしてインスパイアされながら新しい作品をつくっていく、そういう場を与えようということでね。青山のあそこですとね、渋谷も歩いてのところだし、まさにダウンタウンですからね」
http://mytown.asahi.com/tokyo/newslist.php?d_id=1300014



――日本なんだから英語使うことねえんだよ、わけのわからない英語をね。
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コメント

コメント(8)
No title
jinneさん、読み応えバッチリでしたよ。笑っちゃいますよね。上野教授拒否でK市の友達と話したら、K市でも大江健三郎は9条の会だからテーマが文学でも講師にするなと言われたそうですよ。ジェンダーフリーのフリーはバリアフリー、シュガーフリーのフリーと同じで、フリーセックスのフリーとは違うのですけどね。 ジャズバイオリンコーナーっての面白いですねえ。ステファン・グラッペリいいなあ、大好き。

gru**y_c*cli*t49

2006/02/03 02:17 URL 編集返信
No title
まさに正論ですね.迫力があります.

lon*_*ucc*ssi*n

2006/02/03 05:09 URL 編集返信
No title
この記事は、「日本語を使え」という石原知事へのご意見なのか、上野教授の講師を拒否したことへのご意見なのか、その両方なのか、迷いましたが字数から言って石原知事の「日本語~」へのご意見と判断しました。難しい問題ですね。英語でも定着すれば日本語になりますからね。

凡人

2006/02/03 07:36 URL 編集返信
No title
>グランピーさん ジェンダーは「社会的性差」のことなんだから生物学的な性差まで否定するわけがないのは当たり前なんですがね。そもそもジェンダーフリーは「男らしさ」「女らしさ」を否定しているのではなく、「男らしくないこと」「女らしくないこと」を否定する考え方を否定しているわけで。そのへんのところがお役所には分からないようです。あるいは故意に曲解しているか。

Jinne Lou

2006/02/04 02:45 URL 編集返信
No title
>at my own peaceさん 賛同いただきありがとうございます。

Jinne Lou

2006/02/04 02:47 URL 編集返信
No title
>凡人さん 実はそっちの問題はどうでもいいんですが、石原の言行不一致が面白かったのでつい文章を割いてしまいました。論旨が紛らわしくてすみません。

Jinne Lou

2006/02/04 02:50 URL 編集返信
No title
外来語を日本語に訳す才能は 幕末から明治大正にかけて すべて使い果たしてしまったのかもしれません。 もし 石原氏が才能ある執筆家なら 自身で妙訳を編み出してみるべきですね。あの方は 文章力はあるかもしれないけど、元にある人としての 「ソフト」に問題があると思います。

ima**co_*ess*njah

2006/02/19 11:20 URL 編集返信
No title
裸の王様ならぬ裸の都知事様たるゆえんでしょう。

Jinne Lou

2006/02/19 14:34 URL 編集返信
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