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「ふさわしくない」という論理

会田誠さん作品に改変要請 美術館、子ども向け企画展で

 東京都現代美術館(東京都江東区)で開催中の子ども向けの企画展で、現代美術家・会田誠さん一家による文部科学省への批判を書いた作品について、館側が会田さんに改変などを要請していたことが24日、わかった。子どもにふさわしくないなどとする館側に対し、会田さん側からは現状のまま展示できない場合は撤去もありえるとの考えが示されている。

朝日新聞デジタル 7月25日(土)5時30分配信


七夕飾り:安保法案批判の垂れ幕撤去…「ふさわしくない」

 長野市中心部の商店街「権堂アーケード」で、商店主が、安全保障関連法案などを批判する垂れ幕の付いた七夕飾りを設置したところ、「祭りにふさわしくない」との意見が市などに寄せられ、自主的に撤去したことが分かった。

毎日新聞 2015年07月25日 11時03分(最終更新 07月25日 15時55分)



そういえば、先日はこんなことがあった。
とあるSNS上で、市内の話題を共有するグループに所属している。市議会で「安保法制推進」の決議が採択されたことに関して、あるユーザーがこれに反対する立場から各議員の反対・賛成状況を投稿したところ、他のユーザーから「政治に関しての主義主張は、このようなグループでの投稿にはそぐわない」という意見が出た。また別のユーザーから「防衛は国の政治の問題であって、市議会での議論ではない」という意見も出された。

また2ヵ月ほど前だったか、朝日新聞の「声」欄にはこんなエピソードが投稿されていた。
ゴルフ仲間とのコンペで、筆者がゴルフバッグに安倍政権を批判するメッセージを付けていったところ、仲間たちから「そんなものはこの場にはふさわしくないから外せ」と一斉に非難を浴びたのだという。

これらの「ふさわしくない」「そぐわない」とは、一体何だろうか。

マクロの物質がミクロの素粒子からできているように、「公」が個々の「私」の集合によって作られている地続きの存在だという感覚が、この社会には希薄だ。
「私」の世界とは断絶した高貴な場所に、漠然とした「公」があるという考え方が、その土壌を形作る心象である。
これが、政治を自分(たち)の問題として考えることを遠ざけている原因だと思っている。

18歳に選挙権を与えておきながら、18歳が政治について主体的に考えて行動することについては「高校生にふさわしくない」として抑圧する。
個々の家庭の保護下にある未成年は、より「私」的性格が強い存在だ。彼らが「公」の最たるものである政治に関わるにあたっては、一定の制約を強いられる。
冒頭引用記事の「子どもにふさわしくない」も、根本にあるのはそんな論理だと考えられる。
(それでも選挙権年齢が引き下げられたのは、若年層は改憲志向が強いという与党の勝手な思い込みによるところが大きいと思っている)


この社会では、日常と政治が地続きではない。それぞれ別の世界だ。だから日常に政治的意見を持ち込むことも、政治に日常的感覚を持ち込むことも、すぐに抑圧される。
抑圧する主体は「私」ではなく、「みんな」である。「みんな」が不快に思うから、そんなことはやめろという論理である。



これは芸術に関しても同様だろう。

今回、会田誠が美術館側から改変が要請されている作品の一つは、家族の会話を軸に政治と日常をアートとして表現したもので、ある意味マジョリティから最も忌避される性格のものではないか。


上記記事のコメント欄にある「こういう主張をする場所は他にあると思うよ」「中野ブロードウェイなら問題にならなかった」「個人が政治思想を持つのはいいがこれはアートではない」といった意見は、そんなマジョリティの感覚をよく表している。


会田誠といえば、ビン・ラディンに扮して酒を飲みながらクダを巻くビデオ作品などの展示を何年も前に見て面白いと思ったものだが、日本語字幕の消去が検討されているという「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」(これは見てみたい)もその延長線上にある作品だろう。

現在進行形の現実をおちょくりながらそれと濃密に関わり、「ゲージュツとは何か?」を考えさせる作風が会田作品の持ち味だ。
これが、美術館のキュレーターに象徴される“正統なゲージュツ”の番人や、“ゲージュツ村”の村民、さらには一般のマジョリティにも不安感を与え、「フサワシクナイ!」として村八分に遭うわけだ。

日常と、政治と、芸術は、地続きであってはならないのである。この社会では。



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コメント

コメント(13)
No title
ふさわしくない”ンじゃなくて
批判する人の頭がキャシャで弱い。アートはもともと激毒物、、取扱注意!が基本。みんなで仲良くとは正反対。

右へ倣えが国是だから”耐えられない"のでは?

oonamazu

2015/07/26 05:56 URL 編集返信
No title
七夕飾りの件はちょっとやりすぎ感があります。全国的な話題になったので、結果的には良かったでしょうけど。

会田誠の件は好ましくありません。政治と芸術は異なる価値観の下に成立し、時に対立することがあって当然のものです。政治に阿る芸術のグロテスクさは北朝鮮が実践済みで、会田の作品に改変を強いる勢力は日本をそうしたいのかと憤りを感じます。

k-k-kentaro

2015/07/26 23:20 URL 編集返信
No title
会田さんのことは今回の件で
どんな芸術作品を見せて下さっていたかがよく分かりました。

「ビン・ラディンに扮して酒を飲みながらクダを巻くビデオ作品」「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」も、見てみたいです。

この「檄」の文章も読んでみたいです。
ご本人の弁では「家族の会話」「日頃の不満」を作品にされたよう。

ふさわしい、相応しくない…この曖昧な基準が、
どんどん自主規制され、見えない圧力がかかって行って「相応しくない」とする判断が
益々増えていきそうな気がします。

alf's mom

2015/07/27 22:37 URL 編集返信
No title
>oonamazuさん

「健全な芸術」なんてものを求めるのは、ノンアルコールビールで酔おうするようなものでしょう。子ども向けにと大人が勝手に毒を抜いて“芸術教育”をしようとすることのほうが不純で不健全です。

Jinne Lou

2015/07/28 00:43 URL 編集返信
No title
>k-k-kentaroさん

そういえば百田発言の騒動があった自民党の「文化芸術懇話会」にも、同種のものを感じますね。というか、彼らがそこで言う「芸術」とは、本質的にはかつての北朝鮮のマスゲームなどと根は同じものだと思います。

Jinne Lou

2015/07/28 00:47 URL 編集返信
No title
>alf's momさん

会田氏の個展に数年前に行きましたが、どれも芸術や現代社会、ひいては会田自身までもメタな視点から皮肉った作品ばかりで痛快でした。
こういうものが論議を呼びつつも最終的に受け入れられる社会こそ、誰にとっても居心地の良い社会だと思います。

Jinne Lou

2015/07/28 00:54 URL 編集返信
No title
疑わしきは許可しない…これぞ日本の悪しき「お役所仕事」
本来なら「勝たなくていい」太平洋戦争でも、これのせいで自滅に追い込まれた

IB

2015/07/29 08:16 URL 編集返信
No title
抗議や否定の声に、必ず入ってしまう日本人らしい常套句!
「うちはいいけど…」

IB

2015/07/29 08:18 URL 編集返信
No title
すこし違う話になっちゃうかとおもいますが……、
小学校で読み聞かせボランティア参加してたことがあって、主に絵本を読むわけなんですが、それ以外にも雑談というか、へんてこりんな話をしてたんです。選挙とか政治とか、アキレスは亀に追いつけない、みたいな話とか。低学年には無理とおもったので高学年のクラスで。高学年なら児童会選挙もありますし、ニュースの言葉も多少は耳にしてるとおもって。「意味わかんない話をする」って文句も風に乗って耳に入りましたが、いずれやがて何らかの形で芽吹けばいいなァと。

ゆまりん

2015/07/29 10:24 URL 編集返信
No title
>IBさん

全くですね。
自分ではなく、「みんなが」迷惑するからやめろ、という論理は日本独特のものじゃないかと思います。

Jinne Lou

2015/07/30 03:01 URL 編集返信
No title
>ゆまりんさん

子供たちも「子供だまし」の話はなんとなく察するもので、まだよく分からなくてもできるだけありのままに伝えたほうがいいんじゃないかと思いますね。
今朝も「週末にはTPPが決着するかもしれないから月曜は休めるかどうか…」みたいな話をしてたら、子が「てぃーぴーぴーってなに?」と聞くので無理やり簡単に説明したら、夜のニュースでTPPのことをやっているのを見て「あ、これもしかしてあれのこと?」と反応してました。

Jinne Lou

2015/07/30 03:09 URL 編集返信
No title
保育園で「TPPが心配なんだ……」とか言って先生をびっくりさせてるかも♪

ゆまりん

2015/07/30 10:25 URL 編集返信
No title
とりあえず何にでも興味示して首突っ込んできますが、外ではうろ覚えのことテキトーにしゃべってるみたいですね。まだ数もろくに数えられないんですがね。

Jinne Lou

2015/08/01 01:30 URL 編集返信
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