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BEVERLY KENNEY SINGS FOR JOHNNY SMITH

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60年前後のリバーサイドに何枚かアルバムがある「ベヴァリー・ケリー」というジャズ歌手がいて非常に紛らわしいのですが(以前は同一人物だと勘違いしていた)、こちらは同じくジャズ歌手の「ベヴァリー・ケニー」。50年代にデッカとルーストから3枚ずつアルバムを出していて、いま手元にあるのはこのうち5枚。大のケニーファンとして何としても残りの1枚(『ザ・ベイシー・アイツ』)を入手したいところですが、CD化されているのかも不明です。

チャーミングな歌声もさることながら、謎の多い人物像が特徴。ジャケットで見る印象がアルバムごとにがらりと変わるし、髪の色からして何色なのか判然としません。この時代のジャケ写はモノクロが基本で、カラーの場合でもモノクロ写真に勝手に着色していることが多いですが、ケニーの髪を見るとある写真では黒っぽかったり、またある写真では栗色だったり、そうかと思うとブロンドのものもあったり…。まぁ瑣末なことではありますが、なんとなく気になります。

1932年生まれの彼女はトミー・ドーシー楽団を経て独立、いくつかのジャズコンボを転々とした後、55年にこの『シングス・フォー・ジョニー・スミス』でデビュー。5年間に計6枚のアルバムを残して、60年にこの世を去っています。睡眠薬による自殺だったとのことですが(事故との説もあり)、詳しい理由は不明。
「直接の原因は、恋人だったピアニストでシンガーのニッキー・デフランシスの自殺のようだが、彼女は孤独な人でいつも心の中で煩悶しており、心の痛みを抱え日々の生活が辛そうにさえ見えたという報告もある」(『カム・スウィング・ウィズ・ミー』高田敬三氏の解説より)

ちなみに、こちらのサイトでは「寝タバコが原因のホテル火災」が死因とされていて混乱しますが、昨年5月に寝タバコによる火災で亡くなったモニカ・セッテルンドと混同しているのかもしれません。人違いされやすいようです。それだけ影が薄いということでしょうか。地味と言えば地味な歌手ですが、謎めいた魅力が捨てがたいです。

手元にある5枚から選ぶなら、やはりギタリストのジョニー・スミスと共演したこのデビュー作。曲目も〈飾りのついた四輪馬車〉〈ティス・オータム〉〈ボール・アンド・チェーン(スウィート・ロレイン)〉〈オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラブ〉〈星へのきざはし〉など粒ぞろいで、何度聴いても飽きません。〈飾りの~〉はインスト版だとどうもメロディーが単調だしあまりいい曲だとは思わなかったんですが、このヴォーカル版を聴いて一発で気に入りました。“Beep-beep, watch out/Honk honk, everybody scurry”“Chiks and ducks and geese better scurry/When I take you out in a surrey”みたいに擬声や韻を効果的に使ってて、思わず口ずさみたくなる歌詞がとても楽しい。

この歌詞については、あの寺島靖国氏がかつてあるジャズ雑誌の解説記事で、堂々たる勘違いをやらかしてしまったことを後に告白しています。こんな文章でした。
「『飾りのついた四輪馬車』ならまずマイルスに目が行くが、この曲の本当の良さはインストからは伝わってこない。“ジクセン・ザクセン”と擬音で始まるボーカルで初めて生きる曲である」
“ジクセン・ザクセン”ではなく“Chiks and ducks and~”ですが、寺島氏は編集部からの確認の問い合わせに対しても「アメリカのスタンダードソングは、こうした擬音を使うことが多いのです」とわざわざダメ押ししてしまったらしい。恥ずかしそうに振り返っていました。どこかの議員ではありませんが、先入観と思い込みに基づく失敗は誰にでもあるものです。
とはいえ、そう言われれば納得してしまいそうなほどリズムの良い語感。一度お試しあれ。

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ついでに、ケニーの作品ではこれもお薦め。このジャケが良い。

ケリーさんと間違えないでネ度 ★★★★★
薄幸の乙女度         ★★★★☆
隠れファン増殖中!度      ★★★☆☆

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コメント

コメント(12)
No title
ジクセンザクセンと聞いて、思わず「ロニオリ」を思い出しましたよ。と言ってわかる人はいるかなー? このべヴァリーさんの歌声、ソーダファウンテンの匂いがしました。好い時代。

グランピー

2006/03/03 10:47 URL 編集返信
No title
ルイジアナ・ママですか。あれは「オリオリン」と聴こえるという話も聞いたことがあります。

Jinne Lou

2006/03/03 21:27 URL 編集返信
No title
ヴォーカルモノが好きですよねぇ。

tou*uhy**uchi*

2006/03/03 21:59 URL 編集返信
No title
好きですねぇ。最初は50~60年代のハードバップばっかり聴いてたんですが、あるときヴォーカルの面白さに目覚めました。近頃は購入するCDの半分くらいはヴォーカルです。

Jinne Lou

2006/03/03 23:02 URL 編集返信
No title
jinneさん、年齢サバ読んでるでしょ? ロニオリ知ってるのはかなりの年の人のはず。ではそれをモジッて、タモリ大放送で「ルイジンエンママ・コリゴリ」って替え歌、知ってる?/40年代ボーカルはどうです?

グランピー

2006/03/03 23:28 URL 編集返信
No title
それは知りませんでしたね。空耳アワーならいつも見てるんですが。 決して年齢詐称はしていませんよ。世はロッキード事件の渦中に生まれました。40年代のヴォーカルですか。そのへんになるとあまり詳しくないかもしれません。

Jinne Lou

2006/03/04 02:38 URL 編集返信
No title
ははーっ、おそれいりました。お言葉信じますが、Jinneさんのお書きになる物、拝読する限りとても若僧には思えないもので,,,。/タモリもアングラ時代が良かったです。陽のあたる場所は似合いませんや。

gru**y_c*cli*t49

2006/03/04 03:06 URL 編集返信
No title
いや、若造ながら古い話を多少知っているだけですよ。

Jinne Lou

2006/03/04 15:39 URL 編集返信
No title
ご結婚おめでとうございます。お二人でどんな音楽楽しんでいらっしゃるのでしょう? どうぞ末永くお幸せに! 絵文字も描けないので地味なお祝いですみません。

グランピー

2006/03/06 15:37 URL 編集返信
No title
ありがとうございます。音楽の趣味は若干違うようです。下手なことを書くと怒られそうなので、詳細は差し控えます。

Jinne Lou

2006/03/06 23:17 URL 編集返信
No title
TBありがとう御座います。
ケリーとケニーで本当に紛らわしいですね!
でも間違いを防ぐ為にケリーの方は‘BEV KELLY’と記して
いるアルバムもあります。
声と唄い方は全くちがいますね(^_-)-☆

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2009/03/18 23:20 URL 編集返信
No title
ジャケットの顔写真もなんとなく似ていると言えば似ているので、誤解している人もけっこう多いかもしれません。たしかに声を聴けば別人と分かりますがね。
'BEV'としているのは、やはり混同を防ぐためでしたか。“フィリー” ジョー・ジョーンズと“パパ” ジョー・ジョーンズみたいですね。

Jinne Lou

2009/03/19 01:06 URL 編集返信
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