FC2ブログ

〈よくあるウソ〉「自分は中立」「真実を知りたいだけ」


僕は保守といわれるけど、自分が真ん中、中道だと思っています。左でもなければ右でもない。真実を知りたいだけです。正しいファクト(事実)に基づいて判断して、結果が左なら左、右なら右で構わないんですよ。ただ、日本の左は感情論ばかりで事実の裏付けがないから支持できないだけです。

「自分は右(左)ではない、中立だ」という、ありがちな主張だ。

「真実を知りたいだけ」「左は感情論ばかり」と言うが、この手の人間が自己弁護のために弄するこの種の言説はまず信用できない。
ある人が中立や中道であるかは第三者が判断することで、自己申告は無意味だ。
誰もがそれぞれ「自分にとっての中立」の基準を持っている。ヒトラーだって「自分は中立的に行動している」と考えていたとしても不思議はないだろう。
また主張は偏っていても思考のプロセスは公正な人間、あるいはその逆もいる。

右だろうが左だろうが関係なく、感情論もあれば事実に裏付けられた主張もあり、玉石混交であるのが当たり前だ。
にもかかわらず「左(右)は感情論ばかり」と言う場合、自分と異なる側の意見については感情論に基づくものしか見ておらず、事実に裏付けられた主張の存在については無視していることがほとんどである。


たとえばギルバートが、アパホテル主催の懸賞論文で「最優秀賞」を受賞したという“論文”がある。


一読して「論文」と呼ぶには噴飯物レベルの作文が「最優秀賞」だというのだから、賞自体がどんなものか推して知るべしだが(アパだし)、とりあえずそのことは置いておこう。

ここに以下の記述がある。

私が考える日本人の素晴らしい国民性について、思い付いたキーワードを列挙してみよう。意味の重複はご容赦いただきたい。
真面目、誠実、正直、律儀、努力家、親切、優しさ、思いやり…(以下略)

あー、やっちゃったね。この種の言説を真に受けた人たちの間で「日本人ってスゴイ!(日本人である自分もスゴイ!)」という一種の麻薬が蔓延しているのが最近の風潮なんだろう。

“論文”では上記のように「日本人の国民性」なる美点を羅列した上で、サッカー観戦における日本人ファンらのマナーの良さを例示し賛美する。そして、この「国民性」が事実であることを前提に、“論文”全体の論理が構成されていく。

こうした言説に対しては、「事実に裏付けられた」反論がいくらでもあるのだが、ギルバートをはじめ「日本人スゴイ論」を信じたい人たちの耳目には届かないようだ。

「昔はよかった」は本当か? 戦前の日本人のマナーがひどかった!

(略)たとえば、多くの人が行き来する駅や電車の中でのマナー。現代は混雑するホームで列をつくって電車を静かに待つ日本人の姿に、外国人から「さすが礼儀正しい」と称賛の声があがるが、大正時代のその光景は“傍若無人の見本市”。1919(大正8)年に発行された電車でのマナー向上のための小冊子には、「無理無体に他を押しのけたり、衣服を裂いたり、怪我をさせたり、まことに見るに堪えない混乱状態を演ずるのが普通であります」とある。こんな有様なのだから、電車が出発した後も車内はカオス。現在のようにお年寄りや病気の人に席を譲るという習慣はなく、先に座った者勝ちの状態。床には弁当の空き箱やミカンや柿の皮、ビールや日本酒、牛乳、サイダーの瓶などが捨てられ、ときには窓の外へ弁当箱やビール瓶などのゴミを投げ捨て、線路の保安員が重傷を負う事件もあったという(以下略)


これらのことは特定の国の「国民性」といった種類の問題ではなく、日本人がとりたててマナーが良いとか悪いとかいう話でもない。社会の発展段階に付随した現象の一つにすぎないと考えるのがより適切だろうと思う。
しかし日本人の「国民性」という神話を信じたい種類の人々にとってそれは不都合な考え方であり、無視せざるをえない。これこそ「感情論」である。


「正しいファクト(事実)に基づいて判断して」云々と強調するギルバートが“論文”で根拠も出典も示さず紹介するのが、学術的には何も実証されていない以下のような陰謀論だ。
米国だけでなく、日本政府や軍隊の中枢にも、ソ連のスパイはたくさん紛れ込んでいた。近衛文麿内閣の周辺には、たくさんの共産主義者がいたし、近衛首相自身が共産主義者だったとの説もある。結局、日米両国とも、スターリンの大規模な謀略に見事に操られて、お互いに不必要な戦争を戦った可能性が高い / 日本側で行われたソ連の謀略としては、1928年の「張作霖爆殺事件」が、実は関東軍の犯行に見せかけたソ連特務機関による犯行だったという新説が非常に興味深い。

事実よりも「信じたい」という感情に基づく議論以外の何物でもない。

初めから決まっている「信じたい結論」に沿って材料の質を吟味せず寄せ集めた作文を“論文”と称する。そんな人間に「自分が真ん中、中道だと思っています」などと主張する資格はないだろう。
スポンサーサイト



コメント

コメント(12)
No title
転載させていただきました、ありがとうございます。

acalulia

2015/11/25 06:30 URL 編集返信
No title
戦前生まれで反戦平和思想を説く、大橋巨泉が司会のクイズ番組「世界まるごとHOWマッチ」で有名になった外国人タレントの一人ですね。貧すれば鈍するというか、巨泉に顔向けできるのでしょうか。

k-k-kentaro

2015/11/25 18:28 URL 編集返信
No title
どう見ても右でしょうね。朝生に最近出てたけど議論を遮ってたような印象、聞いていられない見ちゃおれんって感じでしたね。何を言ったか覚えてないのは論理破綻だったからかなあ。

carmenc

2015/11/25 18:28 URL 編集返信
No title
>acaluliaさん

転載いただきありがとうございます。

Jinne Lou

2015/11/26 05:10 URL 編集返信
No title
>k-k-kentaroさん

たしかモルモン教の布教で来日したと思いますが、当時は“もう一人のケント”デリカットなどと同じく単なる外国人タレントの一人でしたね。本人は昔から発言していたと言っていますが、露骨に右翼キャラを前面に出してきたのはどう考えても最近のことで、こういう発言をしても大丈夫な空気になったと読んでのことでしょう。

Jinne Lou

2015/11/26 05:16 URL 編集返信
No title
>carmencさん

彼にとっちゃ「真実」などどうでもよくて、異論に対して「論破する」ことだけが目的なんでしょう。

たとえば「朝日の報道で日本の国益が著しく失われた」と強調していますが、朝日が一度も「強制連行」と記述していない金学順さんのケースについて、産経新聞(93/8/31付大阪版)が「北京で強制連行された」「(日本人将校が)金さんらを無理やり軍用トラックに押し込んで一晩中、車を走らせた」などと記述した事実については何も発言しません。
これだけでも「真実を知りたいだけ」という言い分はウソであると断定できます。

Jinne Lou

2015/11/26 05:24 URL 編集返信
No title
この人のことは湾岸戦争のとき、……具体的なことは忘れましたが、ああ、なんだやっぱり、フツーのアメリカ人なんだ、と思いました。アメリカ至上主義というか。
ところで流石の産経。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151125-00000528-san-pol

ゆまりん

2015/11/26 09:40 URL 編集返信
No title
ネクタイ姿でヘルメットかぶって自転車に乗ってる西洋人をよく見かけますが、あれってモルモン教の宣教師なんですね。ずっと前にあの姿の2人組が訪ねてきて英会話教室に勧誘されたことがあります。
ギルバートがあのスタイルを広めたとは知りませんでした。

Jinne Lou

2015/11/27 02:56 URL 編集返信
No title
「中立や中道であるかは第三者が判断することで、自己申告は無意味」。
そう思います。そもそも「中道」なんてあるのかと思います。

「日本人スゴイ論」。最近TVでよく耳にします。聞くのも嫌です。
>事実よりも「信じたい」という感情に基づく議論以外の何物でもない
…そういう「作文」のよう。この人の考えは全く聞いたことがありませんでしたが
こんなヒトなのですね。
今全文を読みました。完全に政権と一致しています。これのどこが中道?

alf's mom

2015/11/28 10:26 URL 編集返信
No title
中立 中道→日和見主義か風見鶏(^_^;) 永世中立国家を謳っている国家も有るようですが、ホントに中立なのかなぁ? 支持母体がソウカガッカリの金迷党も最初は「中道革新」なんて言ってましたが、本性を革新きれず今じゃ権力ベッタリしてるでしょ(^_^;)

gip*****

2015/11/29 06:29 URL 編集返信
No title
>alf's momさん

中立的であることが公正であることの絶対要件であるかのように思い込んでいる人が多いです。いつからそうなったんでしょうか。政治的な発言を日常から排除する空気と密接に関係していると思います。

持論に反する事実を最初から無視する一方で、持論に合致すれば陰謀論だろうが何だろうが無根拠に持ち出すような人間が「正しいファクトに基づいて」などとは噴飯物です。

Jinne Lou

2015/12/06 04:30 URL 編集返信
No title
>gip*****さん

永世中立国は国家間の利害関係については中立かもしれませんが、それは国家と国民の関係が公正であることを意味しないでしょう。
公明党も、今後は支持基盤維持が難しくなるかもしれませんね。

Jinne Lou

2015/12/06 04:33 URL 編集返信
コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

Jinne Lou

Author:Jinne Lou
個人>国家
公共≠国家

月別アーカイブ