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「戦争を暗く描くな」という論理


「戦争を暗く描くな」という主張は、戦争を遂行しようとする国家の論理そのものである。

軍歌の多くが明るく溌溂とした曲調であることを考えても分かるように、戦争を遂行する上で重要なのは、その先に希望があることを兵士や国民に信じ込ませるための「明るい戦争」のイメージだ。
戦時中の日本では、ハンガリー生まれの自殺ソングとして知られる『暗い日曜日』が発売禁止になったこともある。
暗さは戦争の敵なのである。

この論者は、戦争の陰惨さを隠ぺいするために表現を抑圧しようとする国家側の論理に加担しているわけだ。恥ずかしさを感じないんだろうか。

たとえば、ここで「暗黒史観」の一例として批判されているのは次のような場面だ。

紀夫に召集令状が届き、お腹の子供を託されたすみれは、夫不在の中、娘のさくらを出産する。戦況が厳しくなり、近江の坂東本家に疎開するすみれとゆりだったが、おじの長太郎一家の態度は冷たい。そんな中、神戸で大きな空襲があったと五十八からの知らせが入る。昭和20年8月、終戦の日を迎えたすみれは、様子を確認するため、神戸に戻る。そこで目にしたのは、焼け野原になった街と、焼け崩れた屋敷の姿だった

戦時下には、この種のエピソードはありふれていただろう。むしろこうした場面を抜きに戦争の時代を描けば、真実に背くことになる。
国家による戦争と、表現への抑圧の典型的な関係を示す言説だと思う。
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コメント

コメント(14)
No title
戦争を暗く描くな。
って。
は?
とおもいますが。
戦争、戦時下の生活って、暗くて暗くて暗くて暗くて厭なものでしょう。

ゆまりん

2016/11/06 07:45 URL 編集返信
No title
まあ拓大のヒトだからなー、って感じもありますけど。
でも岡田惠和がディスられてるのはちょっと許せない。あまり観てないけど好きなんです。

ゆまりん

2016/11/06 07:51 URL 編集返信
No title
不思議なことだけど、軍産複合体のUSAだけは明るい戦争を繰り返してきた。
もっと不思議なことに、日本に勝ってから一転して暗くなり、どこへ行っても勝てないまま今に至る。

IB

2016/11/06 09:54 URL 編集返信
No title
老子を思い出しました。
仁が無いときに為政者は仁を説く。

心にそれが浮かぶ時って、それとは反対の道を歩いている時なのかもです。

ハートテラス

2016/11/06 11:56 URL 編集返信
No title
品のない喩えですけど、「戦争を暗く描くな」は「ウ○コを臭いと言うな」と言っているのと同じです。そんなの頭がイカれた奴の戯言ですよね。

k-k-kentaro

2016/11/06 18:55 URL 編集返信
No title
連投すみません。
暗く描くなというのは、勇ましい戦闘シーンを描けとか、国のために戦うという意義(?)を強調しろとかいうことなんでしょうか。どう描いたって戦争は人を殺し或いは殺されるもこで、その人には家族や友達や恋人がいて、……とおもうんですけどね。

ゆまりん

2016/11/06 21:24 URL 編集返信
No title
> ゆまりんさん

戦争中でも明るい話はあるでしょうが、だからと言って戦争を暗く描くなと主張するのは、ホワイトタイガーもいるんだから茶色に黒縞のトラを描くのはけしからんと言っているようなものです。

権力にとって都合の悪い表現を排除しようとするこの種の論者は、天安門事件への批判封殺や主体思想の元での人権侵害を批判する資格はないでしょう。

Jinne Lou

2016/11/07 01:33 URL 編集返信
No title
> IBさん

何をもって「明るい戦争」と言うんでしょうか。国家は戦争で勝利しても、その過程ではおびただしい数の兵士が死んでいるわけで、残された肉親にとっては悲劇以外の何物でもありません。

Jinne Lou

2016/11/07 01:37 URL 編集返信
No title
> ハートテラスさん

実際、今の政治家の言動をみていると、そう思わざるを得ませんね。

Jinne Lou

2016/11/07 01:38 URL 編集返信
No title
> k-k-kentaroさん

全くです。たとえばこの戯言を書いている筆者には、戦時中の日本にタイムスリップしたとしても、同じことを言ってみろと言いたいですね。

Jinne Lou

2016/11/07 01:43 URL 編集返信
No title
向田邦子も、戦時下でもみんな暗い顔をしてたわけではなかった、と書いてますね。渡り廊下の簀の子で校長がつまずいて転んだのを遠くから見てみんなで笑っちゃった、とか。だから、戦時下でも笑いがなかったわけではない、って話ですけど、だからってそれはそれでしょう。

ゆまりん

2016/11/14 01:49 URL 編集返信
No title
そういう話と、戦争そのものへの評価を意図的に混同させようとする言説が権力側の論者から出てきていることには、また戦争の時代が近づいていることを感じます。

Jinne Lou

2016/11/14 05:00 URL 編集返信
No title
国家・集団のための「戦争」だけど、個人単位では殺すことと奪うこと

IB

2016/11/15 22:35 URL 編集返信
No title
>内緒さん

戦時中はごくありふれたこの程度のエピソードを「暗い」と非難するこの人は、戦争の本当の恐ろしさなど全く想像できていないんでしょう。

Jinne Lou

2016/12/29 05:40 URL 編集返信
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